次第に寒さが厳しさをまし、“冬季うつ”と呼ばれる症状がピークを迎える季節に入った。厚生労働省によれば、日本のうつ病患者数は100万人を超えるとも試算される。特に、若年層や女性患者が多い欧米に対し、日本では男性や中高年層の患者数が多いのが特徴である。そのため、うつ病による社会的影響は大きく、2010年の試算ではその経済損失は2兆7000億円ともいわれている。
冬季うつは、正確には「季節性情動障害」と呼ばれる。冬の季節にだけうつ症状があらわれ、春になると症状が解消するのが特徴である。日照時間と深い関係があることがわかっており、北欧など緯度の高い国での患者数が多い。欧米では女性に多いが、日本では男性に多い傾向もあるという。
うつ病を発症することで、働けなくなるなどの社会的損失は決して小さくはない。厚生労働省では2010年に自殺やうつによる経済的損失をまとめている。それによれば、自殺やうつによる経済損失額は2兆7000億円にも上っている。内訳は、自殺によって得られるはずの所得が得られなくなる損失が約2兆円と最も大きい。
また、うつ病をきっかけとして給付を受けることになった生活保護費は3000億円。うつ病に関する医療費も約3000億円と並んでいる。欧米と比較して、日本では働き盛りである中高年層のうつ病患者が多いことから、こうした経済的損失の大きさになっていると考えられる。
冬季うつは日照量と明らかな因果関係があるため、予防には冬場でもできるだけ太陽の光を浴びることが重要だ。冬季うつと日照量の関係に注目した、光療法のための治療機器も市販されている。
また、運動がうつ症状の改善に有効であることも知られている。運動療法は、生活習慣病や認知症に対しても取り入れられており、薬の副作用などのリスクもなく、手軽に始められるうつ病対策といえる。
欧米では若年、女性に多いうつ病が、日本では中高年層に多いというのは実に興味深い傾向といえる。いわゆるブラック企業対策や長時間労働の是正など、政府は労働環境の改善に取り組んでいるが、劣悪な労働環境がうつ病などの要因の1つとなっていることは、ほぼ間違いのない事実といえるだろう。(編集担当:横井楓)