7月から買取価格が2円減額。太陽光発電は今後どうなる?

2015年06月20日 20:37

太陽光発電

012年7月の制度導入当初の買取価格40円に比べると13円もの減額だ。この状況を受け、一部では太陽光発電の普及が失速するのではないかと懸念する声もあるが、実際のところはどうなのだろう

 2015年2月24日に経済産業省が示した、再生可能エネルギー固定価格買取制度に基づく2015年度の価格案によって、事業用(出力10kW以上)の太陽光発電の買取価格は、4月に前年比で3円減となるkWhあたり29円(税抜)となり、7月からはさらに2円減の27円(税抜)となる。2012年7月の制度導入当初の買取価格40円に比べると13円もの減額だ。この状況を受け、一部では太陽光発電の普及が失速するのではないかと懸念する声もあるが、実際のところはどうなのだろう。

 マーケット調査会社の富士経済が昨年10月に発表した調査レポートをみると、2030年度の日本国内の太陽光発電システム市場(設置ベース)は、産業用こそ2013年度比24.3%減の1兆4000億円となるものの、住宅用は発電規模で2013年度比3.6倍の5GW、金額ではおよそ2.5倍となる1兆5,000億円に伸長する見通しを立てている。その理由として、住宅用の太陽光発電システムは産業用のそれに比べ、買取価格が低下しても導入しやすく、普及が進んでいる蓄電池やZEHなどにも必要となることなどからも、中長期的には日陰の住宅を除いて、国内のほとんどの住宅で導入が進むと予想している。

 確かに、固定買取制度に関しては、そもそも初年度の買取価格が高すぎた感は否めない。13円も下がるとまるで制度自体が下火になってしまったかのような錯覚に陥るが、特需が永続的でないことは当初から分かっていたことだ。冷静に考えれば、制度運用開始から3年間の優遇期間が終了した7月以降の価格こそが正当ともいえるのではないだろうか。また、普及が進んだことにより、太陽光発電システム自体の設置価格が落ち着いてきたこと、さらには設置業者の技術の熟達や、住宅メーカーのサービスや実績などが充実してきたことを考えると、むしろこれからが日本の太陽光発電の本番という見方もできる。

 例えば、最近の動向として、10kW以上の大容量設備の搭載を薦める住宅メーカーが増えている。10kW以上を搭載した場合と10kW未満では、買取区分(売電可能な電気量)と買取期間が異なるからだ。10kW未満の場合、自宅で使用した後の余った分を売電する「余剰電力買取」が適用され、エネファームを併用するダブル発電では買取価格が低く設定されている上、買取期間は10年と短い。しかし、10kW以上を搭載した場合は発電した電気を全量売電できる「全量買取」と「余剰電力買取」どちらか好きな方を選択することができる上、買取期間も20年と、10kW未満の2倍になっている。とはいえ、10kW以上の太陽光発電設備を設置しようと思えば、それなりの住宅で、屋根の広さも必要になってくる。どの家庭でも導入できるというわけにはいかない。

 そこで面白い取り組みを行っているのが、木造住宅を手がけるアキュラホームだ。同社では10kW未満の住宅に対しても「屋根貸し共同事業」を提案することで、全量買取と20年の買取期間が可能になるプランを展開している。例えば、同社が今夏発売した「太陽を活かす家-初夏-」では、単純に売電価格や期間だけでなく、太陽光発電を導入する際に通常は客側の負担となる初期費用やメンテナンス費用がかからない点や、20年間の期間終了後は太陽光発電システムが客に無償で譲渡されるなどのメリットもある。

 省エネや創エネは、今や先進国各国の常識ではあるが、中でも太陽光発電はユーザー側としても設置するだけで省エネや創エネが可能になり、売電などの恩恵も得られる優良なシステムの最たるものだ。助成金や補助制度、特例制度などの一過性のものに判断を委ねるのではなく、消費者もメーカーも広く長い視点で考えたいものだ。(編集担当:藤原伊織)