地域の消費喚起や子育て支援の一環として発行されている「プレミアム付き商品券」が大きな話題となっている。国が緊急経済対策の目玉として投入した、総額4200億円に上る地方創生交付金を資金源に、日本全国の各自治体が今、こぞって購入額よりも割増の額面の「プレミアム付き商品券」ないしは「ふるさと名物商品・旅行券」を発行しており、各地で行列ができる騒ぎになっているのだ。
例えば、京都市でも7月から1万2千円分の買い物やサービスに使える「プレミアム付き商品券」を発行するが、18歳未満の子どもがいる約11万世帯には、子ども1人につき2千円分の割引券も送られる。その割引券を使えば、1万2千円分の「プレミアム付き商品券」が子ども一人なら8千円、子どもが二人いる場合は6千円、つまり半額で購入できるのだ。利用可能期間や利用可能店舗、発行部数など、いくつかの制約はあるものの、スーパーの特売などとは比較にならないくらいの「お得」であることは間違いない。
しかし、個人、とくに子育て世帯にとっては大変有り難い経済政策である一方、緊迫した国の財政をさらに圧迫するバラマキ政策でしかないと批判する声も多い。確かに、一時的に消費を促すカンフル剤にはなりえるかもしれないが、費やした国費に見合うだけの景気向上の効果があるかといわれれば疑問が残る。子育て支援や少子高齢化対策としても、永続的なものとは言い難い。
子育てに関しては近年、政府の政策よりもむしろ、民間企業の努力や取り組みが活発に行われており、環境整備が進みつつある。例えば、1990年にいち早く育児休業制度を導入するなど、子育て環境の整備を比較的早い時期から行っている資生堂<4911>では、事業所内保育施設の設置や、美容職社員が育児制度を利用する際に代替要員を店頭に派遣する「カンガルースタッフ体制」を全国導入するなどの取り組みを行っている。
また、飲料大手のキリン株式会社では、07年頃から短時間勤務の充実や、育児休業の一部有給化を導入するなど、男女を問わず、社員が子育てを両立しやすい環境づくりに取り組んでいるほか、女性社員の声を集めて、女性社員を応援するための社内組織として「キリン・ウィメンズネットワーク」を立ち上げるなどの活動も行っている。
さらに木造住宅メーカーのアキュラホームでは、より具体的な子育て支援として、社員が出産した際に祝い金として、1人目には30万円、2人目は50万円、3人目以降にはなんと1人につき100万円を支給する「「しあわせ一時金」制度を導入している。これは自らも4人の子宝に恵まれた宮沢社長の「お客様の住まいづくりで「しあわせ」な暮らしのお手伝いをするアキュラホームの社員もしあわせであってほしい」という願いが込められているという。
プレミアム付き商品券も一つの策ではあると思うが、このような企業を一社でも増やすような支援を行うことの方が、より将来的な子育て支援や少子高齢化対策につながるのではないだろうか。(編集担当:松田渡)