サントリーの新商品「The MALT’S」、ビール税改訂前に市場に楔を打つ

2015年09月06日 15:15

The Malt's

サントリービールが市場に投入する新商品「The MALT’S(ザ・モルツ)」

 来年度の税制改革の一環として、酒税の見直しが議論されているなかで、税率の低い発泡酒や第3のビールの税率が上がる。一方、ビールの税率が下げて、ビール系飲料の税率を統一するもようだ。財務省案では、現在350ml缶のビールの酒税77円を値下げし、発泡酒47円、第3のビール28円の税額を値上げして、55円程度に揃えるという。こうしたなかで、ビールメーカー各社は、現状で麦芽比率67%以上とされている本物のビール訴求に力を注ぐ。

 そのようななかで、サントリービールが新商品「The MALT’S(ザ・モルツ)」を発売する。発泡酒でもなく、第3のビールでもない。新製品は350ml缶で225円前後の定番価格帯のビールで、サントリーが新たなブランドを出すのは18年ぶり。「The MALT’S」はプレミアム・モルツなどで使いはじめた高級品種とされる“ダイヤモンド麦芽”を使用、コクや旨みにこだわったという。今回の「The MALT’S」の投入で29年間販売してきた同社の「Malt’s(モルツ)」は終売となる。同時の料飲店向けに供給してきた「Malt’s生樽」も「The MALT’S」に切り替える。サントリービールは、早急に国内シェア20%を獲得するとしているが、「The MALT’S」は、市場に楔を打ち込めるか?

 ところで、サントリービールが9月3日から放映を始めた新製品「The MALT’S」のテレビCMが、競合するアサヒビールへの挑戦状だとして業界内で話題を集めている。人気グループ「EXILE(エグザイル)」のメンバーが、他のメンバーにビールを注ぎながら「ドライに生きてて楽しい?」と語りかける内容だ。明らかにアサヒの主力ビールである「スーパードライ」を揶揄しているのは間違いなさそうだ。

 別項で触れたが、この20年間、ビール各社は発泡酒や第3のビールの開発競争に明け暮れていた。いわゆる国内だけでしか通用しない商品、国税との綱引き「ガラパゴス・ビール戦争」を続けてきた。ところが、冒頭の酒税の見直しをきっかけに、メーカーとしては定番ビールで巻き返しを狙っている。“本格ビールを制すものが市場を制す”ことになるのか。

 現在法律でビールの麦芽比率67%以上と定められている。サントリーの新製品「The MALT’S」は、麦芽100%ビールだ。国は税制改定と同時に、国際的な麦芽使用率50~56%前後に規則を変えるつもりでいる。次に待っているビール開発競争は、麦芽使用率を下げて旨味を追求した、新基準ビールになりそうだ。そう考えると、今回の新商品「The MALT’S」は、それまでの“繋ぎ商品”なのか?(編集担当:吉田恒)