アイリッシュウイスキーの雄「ブッシュミルズ」、キリンからアサヒビールの取り扱いに

2015年09月05日 18:21

Bushmills

左から、「ブッシュミルズ」「ブッシュミルズ・ブラックブッシュ」「ブッシュミルズ・シングルモルト10年」「ブッシュミルズ・シングルモルト16年」で、すべて700ml/1本、アルコール度数40%

 蒸溜アルコールは8~9世紀ごろに錬金術師によって蒸溜技術が開発され、製造された。場所はエジプト、中東など諸説ある。その後、その蒸溜技術が、キリスト教修道士らによって世界に伝わったとされている。

 ただ、ウイスキーの起源は明確に分かっていない。歴史的にウイスキーが文献に初めて登場したのは1171年。イギリス国王ヘンリー2世がアイルランドに侵攻した際の記録に、住民が「ウスケボー」という蒸溜酒を飲んでいたとされている。それが「ウイスキー」の語源となったという説が有力だ。が、この頃、すでに修道士たちによって蒸溜酒が製造されており、実際にはそれ以前から製造されていたと考えられる。

 ウイスキー発祥の地としてはアイルランド説が有力で、ゲール族の移住とともに蒸溜技術が伝播したのではないかといわれている。

 アイルランドでつくられるウイスキーがアイリッシュ・ウイスキーで、20世紀初頭には世界のウイスキーマーケットの60%以上を占めていた。しかし、1919年、最大の輸出先だったアメリカで禁酒法が施行され生産規模が半減した。また、先の大戦後、独立したアイルランド自由国の製品は、報復としてイングランドとその植民地市場から排斥され、蒸溜所は淘汰された。

 現在、アイリッシュ・ウイスキーの蒸溜所はおおむね4カ所に収斂されている。ミドルトン蒸溜所、ブッシュミルズ蒸溜所、クーリー蒸溜所、キルベガン蒸溜所である。

 そのなかで最も古いとされるブッシュミルズ蒸溜所は、1608年創業。現在稼働中の蒸溜所としては世界最古の歴史を持つ。もちろんアイリッシュ・ウイスキーの中でも最古の蒸溜所である。

 今回、アサヒビールが国内展開する同ブランドのラインアップは4種だ。特徴に簡単に触れると、「ブッシュミルズ」は、ノンピート麦芽を100%使用し3回蒸溜を行なったモルト原酒とグレーン原酒をブレンドする。スムーズな口当たりとフレッシュな果実のような味わい。

 「ブッシュミルズ・ブラックブッシュ」は、3回蒸溜を経て、シェリー樽とバーボン樽で最長7年熟成させたモルト原酒を80%以上使用し、グレーン原酒とブレンド。熟した果実のような香りと重厚な味わい。

 「ブッシュミルズ・シングルモルト10年」は、3回蒸溜を行ったモルト原酒を、主にバーボン樽で10年以上熟成させている。蜂蜜やバニラのような甘い香りと複雑な味わいだ。

 シリーズ中最も長期熟成した「ブッシュミルズ・シングルモルト16年」は、3回蒸溜を行ったモルト原酒を、シェリー樽とバーボン樽で長期熟成させた後、さらに数カ月間ポートワイン樽で熟成させたシングルモルト。ダークチョコレートやローストナッツのような甘い香りと複雑な味わいだという。

 いずれも、アイリッシュ・ウイスキーの伝統的な製法である3回蒸溜を守り、原料にはノンピート麦芽100%のモルト原酒を使用することで、軽やかでスムーズな飲み口でありながらモルトの味わいがしっかりと感じられる味わいを実現している。

 ブッシュミルズのラインアップは、これまで国内でキリンビールが取り扱っていた。が、この10月からアサヒビールが扱う。その経緯についてはリリースでは触れていないが、アサヒがアイリッシュ・ウイスキーを取り扱うのは初めて。このアイルランドのウイスキーが加わり、ウイスキー世界5大産地(アイルランド、スコットランド、アメリカ、カナダ、日本)の製品で同社に残されたのはカナディアンウイスキーだけとなった。(編集担当:吉田恒)