1月15日に電子情報技術産業協会(JEITA)が発表したデータによると、2012年11月の移動電話国内出荷台数は196万台で、前年同月比95.7%と7ヶ月連続のマイナスとなっている。しかしスマートフォンに限ってみると、115.1万台で前年同月比127.8%、5ヶ月連続で二桁以上の成長を記録しており、好調な市場の一つである。
このスマートフォンや、同様に好調なタブレット端末などに欠かせないのがMEMSセンサである。MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systemsの略で、半導体製造技術等の各種微細加工技術を応用し、微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだデバイス・システムのこと。半導体が「産業のコメ」と呼ばれるのに対し、MEMSは「産業のマメ」と呼ばれるほど重要なものであり、これを用いたセンサがMEMSセンサと呼ばれている。スマートフォン等の端末には、加速度センサやジャイロスコープ、地磁気センサに近接センサ、圧力センサやGPSなどが搭載されており、高機能化・多機能化を実現しているのである。そして、機能が多彩化していくとともに複雑化しているのが、これらセンサを支えるソフトウェアであり、センシング全体を管理するセンサ・フュージョンである。
現在、日本企業においては、オムロン やパナソニック などがセンサ業界では高い売上高を誇っているが、今後はセンサ単体よりもソフトウェアを含めたサポート力が重要になってくると見られている。こうした中、センサ全体のトータルソリューション提案を強化しているのがローム である。子会社であるカイオニクスは、従来からソフトウェアの開発などを得意としており、ソニーのプレイステーションヴィータやKinectなど様々な製品に同社の技術が組み込まれている。
ロームグループとなってからは、さらにソフトウェアをはじめとするソリューションの拡大に注力しており、新製品の9軸加速度センサ・フュージョン・ソリューションにおいては、マイクロソフトのWindows8の認証も受けている程である。同社のセンサ・フュージョンは、加速度センサ、ジャイロスコープ、地磁気センサを含む9軸プラットフォームをサポートするだけでなく、3つの異なるセンサをひとつのシステム上で統合制御する際に重要となる自動補正の機能も備えており、その採用実績から製品に対する信頼性は非常に高いことが窺えるであろう。同社は今年に入ってからも、従来の民生用ジャイロに比べて消費電流を80~90%節減した製品を開発したようで、益々その技術は向上しているようである。
富士キメラ総研の調査によると、2011年には3兆2669億円であったセンサデバイスの世界市場は、2020年には4兆5293億円にまで拡大すると予測されている。また、フランスのYole Developpement社の調査では、MEMS市場は2010年から2016年までに年率平均15%で成長すると予測されている。いずれにしても同市場が拡大傾向にあることに間違いはなく、この傾向は暫く続くということであろう。好調な市場であるだけに、今後の日本企業の活躍に期待したい。(編集担当:井畑学)