爆発的に普及しているカメラ機能付ハイスペックスマートフォンの勢いにおされ、ここ最近は存在感を薄めつつあるコンパクトデジタルカメラ。高性能化と軽量化、さらにライバルとの価格競争の中で、デジカメ市場全体のシェアを左右するコンパクト分野において市場に投入された新製品から、各メーカーの戦略と本気度が見えてくる。
まず、得意の一眼レフ製造に培ったセンサー技術を応用し、圧倒的な描写力でスマホとの差別化を図っているのがソニー<6758>だ。昨年発売された「Cyber-shot DSC-RX100」は、これまでのコンパクトデジタルカメラの画質とは一線を画する絵づくりで、上位スペックのカメラユーザーからも高い評価を得ている。それまで1/2.3型が一般的だった撮像素子を、1.0型まで大型化することで、画像ピッチに余裕ができ、コンパクトなボディにかかわらず、2020万という高画素で滑らかに表現することを可能にし、「コンデジは携帯性重視なので画質はそこそこであればOK」というコンパクトデジカメに対する既成概念を覆させた。また同社は、2013年第一弾として発売された「DSC-WX200」では、Wi-Fi機能を搭載し、スマートフォンやタブレットからカメラを遠隔操作して撮影できる「スマートリモコン」に対応するなど、スマホとの連携も強化している。
また、デジタルカメラ業界において、個性的なカメラを発売し異彩を放っているのがカシオ計算機<6952>だ。同社が発売する「HIGH SPEED EXILIM」シリーズは、秒間30コマの高速連写という驚異的なハイスピードテクノロジーが人気。さらに、その機能を応用した動画機能「最大1000fpsハイスピードムービー」では、スポーツ中継や映画などでもよく使われるスーパースローの映像を気軽に体験することができる。最新かつ最上位モデルである「EX-ZR1000」では、可動式液晶モニターを搭載し、これまでのハイスピード技術にさらに磨きをかけ、高画質化も実現し、市場での評価も高い。同社は、レンズ交換式カメラには参入せず、コンパクトデジタルカメラにこだわり続けるスタンスを今後も貫き、高度な特殊撮影機能や画質などでスマートフォンとの差別化を図っていく方針のようだ。
独のライカ社と提携し、レンズの共同設計とライカの認定を受けたレンズ製造を行ない、そのブランド力をコンパクトデジカメにも活かすことで安定した人気を得ているのが、パナソニック<6752>の「LUMIX」シリーズ。世界最薄ボディに光学20倍ズームレンズを搭載したモデル「DMC-TZ30」は、価格.Comの売れ筋ランキングでも第1位となるなど、発売以来、好調さを維持している。描写性も高い上、「ライカDC VARIO-ELMAR(バリオ・エルマー)レンズ」を使用した光学20倍ズーム、進化した光学手ぶれ補正機能、高感度撮影を可能にするノイズリダクション効果、レスポンスの軽快さなど、スマホには追いつく事のできないハイスペック機能で、「旅カメラ」や「お散歩カメラ」として多くの女性ユーザー獲得にも成功した。
BCNが2012年11月に発表した統計では、過去4年間を通して、台数、金額ベースともに過去最低となったコンパクトデジタルカメラ市場。レンズ交換式カメラやスマートフォンは好調のことを考えると、その間の立ち位置で役割が希薄になってきているのは明らかだ。メーカーサイドとしても、コンパクトカメラをあまりにもハイスペックにしてしまうと、より高い利益が計算できるレンズ交換式上位機種のユーザーが奪われるという恐れがあり、またコンパクト分野を軽視していると、新規ユーザーの獲得がライバルに遅れをとり、シェアが奪われてしまうというジレンマがあるだろう。もちろん、コンパクトデジカメだけにこだわるカシオは別だが。
メーカー各社としては今後、カメラとしての描写力とコンパクトな携帯性を両立することでスマホとの差別化を図りながらも、Wi-Fi機能を搭載するなど、スマホやタブレットとの連携も検討していく必要がありそうだ。この分野では海外メーカーの台頭も著しいだけに、日本カメラメーカーの世界市場での優位性をキープするためにも、コンパクトデジタルカメラ分野でも芯のある戦略が必要になってくる。(編集担当:北尾準)