2013年、テレビの新しい夜明けが訪れるのか

2013年01月21日 08:29

 地上デジタル放送への切り替えと、それに伴う買い替え需要の反動で、テレビメーカー各社の売り上げが厳しい落ち込みをみせている中、2013年はテレビというメディア自体のあり方が大きく生まれ変わる節目の年になるかもしれないといわれている。その根拠となるのが「スマートテレビ構想」だ。

  スマートテレビへの動きは、何も今に始まったことではない。テレビをインターネットに接続する機能自体は珍しいことではなく、家庭に普及しているほとんどのテレビは、すでにその機能を備えている。もともとは、11年の9月に韓国企業のサムスンが「スマートテレビ」という呼称を使ったことからその呼び名が広まったといわれているが、実際のところ、スマートテレビの定義は未だはっきりと確立されているわけではない。

 ここ数年、インターネットを介することで、テレビという娯楽システムにどんな新しい可能性を見出せるか、放送業界だけでなく、さまざまな業界が模索し続けてきた。
そして、これまではまだ「テレビをインターネットにつなごう」と、ユーザーを少しずつ啓蒙している段階だった。しかし、昨年あたりから徐々に、実際にその機能を活用してもらう段階に移行しはじめているのだ。

  例えば、テレビだけでなく、テレビゲームにもその兆候は現れている。これまでのテレビゲームは一人、もしくは友人や家族と数人でプレイして楽しむスタイルが主流だったが、これからは違う。インターネットに繋ぐことでソーシャル化を図り、知り合いだけでなく、見ず知らずの相手との共同プレイも可能なソフトが数多く出回り始めている。また、それらのゲームソフトの世界には数百、数千人という単位での参加者があることも珍しくなく、遊びの幅が無限に広がるのだ。

 また、スマートテレビという呼称から「スマートフォン」を連想する人も多いと思うが、実際にテレビをスマートフォンのように利用するというのも、「スマートテレビ」の解釈の一つだ。

  パソコンは扱えなくても、ほとんどの人はテレビの操作くらいはできるだろう。しかも、複雑な操作ではなく、テレビのチャンネルを替える程度の感覚で利用できるとしたら、高齢者でも気軽にインターネットを楽しめるようになる。youtubeなどの動画サイトを閲覧したり、Googleの検索がテレビで簡単に使えるようになると、テレビとパソコンの境界線は曖昧になってくる。インターネットの膨大な情報網がお茶の間に進出してくれば、テレビ放送だけに限らず、メディアのあり方自体が大きく変容し、躍進していくにことになるだろう。

 現在、スマートテレビには決まった定義は無く、可能性は無限に広がっている。単なるパソコンの代替品のようにテレビを取り扱うのか、それともインターネットを介する新しいビジネススタイルを確立するのかでも、大きく違ってくるだろう。この未開の地をどのように開拓していくかは、スマートテレビ構想に大きな可能性を見出している様々な企業に委ねられているのだ。実際、すでに、AppleやGoogle、Amazonなどの海外大手企業は、このスマートテレビにむけて着実に動き出し、シェア獲得に向けて水面下では激しい攻防戦が始まっている。

  一方、日本人の多くは「テレビは過去のコンテンツ」と位置づけており、開発するテレビメーカーの方も、ネット接続を可能にしただけで満足し、「4K」や「8K」といった画質を向上させることばかりに力を注いでいる感がある。かつては日本の輸出産業の主力商品であったカラーテレビ。ガラパゴス化して、世界基準からまた離れていってしまうのだろうか。

 今年、AppleがSiri対応のテレビを発売するとの噂もあり、それに追随するかのようにGoogle、Amazonも各社のスマートテレビ構想を全面に打ち出してくるだろうといわれている。そんな中、わが日本の企業が、どんな動きを見せるのか注目したいところである。(編集担当:藤原伊織)