Siに代わる次世代材料SiC、続々と製品化される

2012年06月11日 11:00

 パワーモジュールの小型化や冷却系の簡素化が期待できる材料として、シリコンにかわる次世代材料として注目を集めているシリコン・カーバイド(炭化ケイ素:SiC)。このSiCを利用した製品の広がりが進んでいる。

 4月16日には日立製作所が、装置の小型・軽量化と電力損失の低減とを両立した、直流1500V架線対応の鉄道車両用SiCハイブリッドインバーターを開発したと発表。SiCハイブリッドモジュールを用いることでシンプルな回路構成を実現できた上、使用時に発生する熱を冷やすための冷却器の小型化を図ったことなどで装置の小型化を実現、シリコン素子を使用したインバーターと比べ容積と質量を40%低減しているという。さらに、ソフトゲート制御技術を本インバーター向けに最適化を図ることで、SiCハイブリッドモジュールを用いる際の課題となっていたスイッチング時のノイズ増大への対応を図り、電力損失を35%低減しているとのこと。

 また5月23日には三菱電機が、パワー半導体素子をすべてSiCで構成した強制空冷式フルSiCインバーターを開発し、検証用インバーターにて50kVA/Lという高パワー密度での動作を実証したと発表。本製品の特徴は、通常の電気接続方法であるアルミワイヤボンディングに代わり、パワー半導体チップに主端子を直接はんだで接合する低抵抗配線の適用により、電流密度を最大限高めることが可能となっている点にある。

 このようにSiCを使った製品が増えると同時に、その性能を向上させる為の研究も進んでいる。6月4日には、京都大学が世界最高レベルの耐圧2万ボルトの半導体素子の製作を実現したと発表。電力の送電、変電などの変換器には超高耐圧の半導体素子が必要となるものの、現在使われているシリコンでは材料の性質に起因する制約のため、6000から8000ボルト程度の耐圧が限界であった。今回の開発では、独自のSiCの結晶成長技術と加工技術、電界集中を緩和する構造の採用、および表面保護技術を集約することで、20000ボルト以上の耐圧を示すPiNダイオード(整流素子)を実現したという。20000ボルト以上の耐圧は、SiCに限らず、いかなる半導体素子の中で最高の耐圧を達成しているという。

 世界半導体市場統計による2012年春季半導体市場予測によると、2012年の世界の半導体市場規模は、2011年をわずかに上回る3009億ドル(約23兆8300億円)、対前年約13億ドル増となり、その後、2013年には7.2%増と回復、2014年には4.4パーセント増と緩やかな成長を継続すると予測されている。日本の技術は、こうした成長を担い、市場を牽引することができるのであろうか。その動向に注目が集まるところである。