IT専門調査会社 IDC Japanは、2015年7月に558社の国内企業を対象に実施したマーケティング活動とIT利用に関する調査の分析結果を発表した。
2014年の国内マーケティング市場は、マーケティングオートメーション製品が多数投入され、クラウド型サービスの部門利用や、SFA(セールスフォースオートメーション)など他システムとのデータ連携、これに基づくデジタルマーケティングの活発化を背景に、ECサイトを保有する企業などでIT活用が進みました。また業績が好転した企業では、ビジネス分析を目的にした大規模なデータプラットフォームの刷新も行われている。
この調査によると、パーソナルデータの活用(将来的なマイナンバーの企業利用など)も視野にデジタルマーケティングのさらなる浸透と、データの分析需要が今後の国内マーケティング市場をけん引し、2014年~2019年のマーケティングソフトウェア市場の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)が10.5%になると予測している。これは同期間におけるアプリケーションソフトウェア市場全体のCAGR 3.1%(Japan Semiannual Software Tracker、2014H2)と比較して、非常に高い成長率であるとしている。
国内企業のマーケティング活動におけるIT利用がこれまで進んでいなかった理由が、推進役の欠如にあると仮定し、その設置率を調査した。CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)は43.0%、CDO(Chief Digital Officer、Chief Data Officer:最高デジタル/データ責任者)は35.8%であり、関連する全社横断的な管理部門の設置率も45%前後と想定を上回る結果となった。
これらの推進者を有する企業では、全社的なマーケティング活動方針の策定が進んでいるものの、実務では社内に散在するデータの一元管理やその分析に関する担当者のスキル向上などの課題を抱えているという。しかし、一方では積極的なデジタルマーケティングへの取り組みが着実に進んでおり、将来的にマイナンバーも含めたパーソナルデータの企業利用に向けた準備も行われていることが明らかになった。また今後導入したいITを確認したところ、「Web会議/チャット」「顧客管理システム」「マーケティングオートメーション」という回答を得た。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストのもたい 洋子氏は「CMOや部門横断的なマーケティング関連部署の設置が進んでいるが、今後の課題の解決やIT活用を進めるには、各社の事業目標と連携するマーケティング活動を俯瞰的にとらえる視点が不可欠。コンサルティング会社や広告代理店、ベンダーなどの外部支援も積極的に活用し、経営視点で注力目標と実活動におけるギャップを把握した上で、将来的にマイナンバーなどのパーソナルデータ活用と、費用対効果の高い持続可能なマーケティング活動の実現に向けた体制強化を図るべき」とコメントしている。(編集担当:慶尾六郎)