エプソン、オフィス内で使用済みの紙から“新しい紙”をつくる「PaperLab」を発表

2015年12月12日 19:52

PaperLab

PaperLabは、幅2.6×奥行1.2×高さ1.8mとかなり大きい。設置するスペースを確保できる企業にとってメリットは大きい。動作音は中型のシュレッダー程度で「70dB以下には抑えたい」という。当面、国内販売に限定。大手企業や金融機関、官公庁、自治体などをターゲットに販売する予定。価格は未定

 セイコーエプソンは、使用済みのオフィス用紙から新しい紙を生産することができるオフィス向けの製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」を開発し、10日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の環境展示会「エコプロダクツ2015」のエプソンブースで公開した。

 一般的な製紙工程では水を使用するが、同機は水を使わず紙を再生産できる世界初の製紙機。水を使わずに製紙できる同社独自技術「Dry Fiber Technology(ドライファイバーテクノロジー)」を採用。一般的な工程では、紙を溶解する際などに水を使用するが、同機では水を使わず紙を繊維化して結合、成型して新しい紙を生産できる。2016年内に商品化の予定だ。

 金融機関や自治体など、コピー用紙などを大量に使う企業などへの導入を想定している。一度プリントなどで使ったオフィス用紙をPaperLabに投入すると約3分で新しい紙ができあがる。A4用紙なら1分間に約14枚、就業時間である8時間稼働させれば6720枚の紙をオフィスでつくることができる。原料として使用できる紙は一般のA4、A3のコピー用紙だ。

 使用済みの紙を繊維までに分解するので、プリントされた機密文書情報などを完全に抹消できることも特徴。

 同社ブースでは、同社の碓井稔社長がデモンストレーションを実施。「オフィス内で紙を再生することにより、これまでのリサイクルの輪が小さく、シンプルになる。お客様は新しい紙の調達量を減らすとともに、これまで必要だった輸送CO2(二酸化炭素)の削減も期待できる」とメリットをアピールした。

 PaperLab の開発は、2011年から社長直轄プロジェクトとしてスタート。プリンタメーカーであるセイコーエプソンが、紙を消費するだけでなく、紙の再生サイクル事業にも踏み出したわけだ。

 PaperLabを開発した同社は、「企業がコミュニケーションを行なう上で、紙は欠かせない媒体で、オフィス用紙の消費量は減少していない。一方で、大量の機密文書を管理したり、適切に抹消したりするためのコストが増加している。当社は、紙を使って業務効率を高めたい企業に対して、世界初となるスマートサイクル事業を提案する。プリンティング文化を大きく発展させるとともに、循環型社会の活性化を目指す」と述べた。

 これまで紙資源の再生は、オフィスから廃棄される紙を回収業者が回収して再生工場に運び込み、再生紙を作り、それをオフィスで再利用するという循環が必要であった。PaperLabを使えば、社内だけで紙を再生することから、シュレッダーにかけた機密文書などを回収業者に出す必要がなくなり、情報漏洩防止などに関してもメリットがある。また、紙の購入量を削減できる。(編集担当:吉田恒)