日本発の最先端技術開発が静かに進んでいた。テクニカルタームはSenSprout(センスプラウト)という。これは、インクジェットプリンターによる印刷技術とEnergy Harvesting(エナジー・ハーヴェスティング)による無線給電を組み合わせて実現した、土壌のモニタリングセンサーネットワークのアプリケーションである。
つまり、静電容量の変化をモニターするセンサーが、耕作地の土の中の水分量を検知して水分の補給などを知らせるシステムが簡便に構築できるネットワークだ。
開発したのは、東京大学大学院情報理工学系研究家・川原圭博准教授。同氏はインクジェットプリンターで印刷した回路基板が、そのまま電子回路として使える“Instant Inkjet Circuits”という技術を使ってSenSproutを作る方法を開発。インクジェットプリンターの印刷技術を使っているため小ロット生産でも大規模生産でも低コストで製作できるという特徴を持つ。これまで、数10万円していた土壌水分センサーの価格を数千円で実現できる可能性を秘めているという。
川原氏によると、米国の大規模農業の耕作地では機械化した水分補給装置で概ね30%ほど余計に水分補給を行なっているのが実情という。ある意味で農業者の勘に頼っていた“水やり”をSenSproutのモニタリングから得られた情報に基づいて実施すれば、水資源の大幅な節約につながる。また、応用により地滑りセンサーなどにも発展する可能性もあるという。
デモンストレーションでは家庭菜園などを想定したセンシングで、スマートフォンと通信していたが、通信方法はユーザーの農業規模に応じた技術導入が可能だという。大規模農場などでは、Wi-FiだけでなくWi-SUNなどの遠距離通信が可能なスマートメーターの通信技術が活用出来るという。
川原氏が開発した、この「SenSprout」は、今年1月に開催された第3回「シーバスブラザーズ・ヤングアントレプレナー基金」を受賞。シーバスブラザーズ社から1000万円の助成資金を受け取った。本基金は、幻冬舎が発行する雑誌「ゲーテ」とシーバスリーガルを展開するペルノーリカール・ジャパンが協力し、有望かつ若いビジネスパーソンをサポートすることを目的に2012年に設立した。今回は日本全国のイノベーティブなビジネスアイデアを持つ20歳~49歳のビジネスパーソンを対象に、助成金を交付するため、2014年10月1日~12月1日で募集を行なっていた。
なお、川原氏は英国のシーバスブラザーズ社が主催する『アントレプレナー世界大会「THE VENTURE(ザ・ヴェンチャー)」』へ日本代表として参加する。「THEVENTURE」は、米シリコンバレーに世界16カ国の代表が集まり、2015年7月に開催を予定している。その優勝賞金は最大100万ドル。7月のニュースに注目したい。(編集担当:吉田恒)