日産が目指す未来の自動運転を具現化した革新的コンセプトカーだが…

2015年12月30日 19:38

Nissan IDS

2015年10月の東京モーターショーで日産ブースの主役を演じた日産が目指す自動運転装置満載の「ニッサンIDSコンセプト」

 自動車が誕生して以来、クルマの運転は運転手&ドライバーの役目だった。しかし、「202X年という遠くない将来、クルマの運転のあり方に革新的な変化が起こる」というスタンスで日産自動車は自動運転車開発を進める。日産は、進化した車両制御技術、安全技術と最新のAI(人工知能)技術を統合した自動運転技術で、自動運転車の実用化をリードしていくという。

 2015年の東京モーターショーで公開した「ニッサンIDSコンセプト」は、日産が目指す自動運転の方向性を示したモデルであり、ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)の将来を見据えたコンセプトカーでもある。

 次世代自動車のあるべき姿として、自動運転技術の研究・開発は大きな注目を集めている。一昨年、日産のカルロス・ゴーン社長兼CEOは「2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載予定だ」と発表。この計画に沿い、同社の自動運転技術開発は順調に進んでいることを示したのが、「ニッサンIDSコンセプト」だ。

 「ニッサン・インテリジェント・ドライビング」が内包する機能は以下となる。自動運転モードでは、クルマが様々な運転操作を行なうのはもちろん、加速やブレーキング、コーナリングなど、あらゆる場面においてドライバーの思いのままに動く。そして自らステアリングを握る時は、ドライバーが安心して意のままにクルマを操れるドライビングフィールを提供できる。クルマが信頼に足るベストパートナーになる「Together We Ride」が、日産自動車が目指す自動運転車のベクトルなのだ。

「ニッサンIDSコンセプト」の自動運転は、搭載したAIがドライバーの走り方や癖を学習。自動運転となるPDモード(パイロットドライブモード)でドライバーが同乗者との会話や、車窓の風景をリラックスしながら楽しんでいるとき、まるでドライバー自らが運転しているかのような感覚と同時に、ミスのない信頼できる走りを提供する。

「ニッサンIDSコンセプト」をドライバーの意思で操作する、MDモード(マニュアルドライブモード)にすれば、ドライバーは自らの意志でクルマを操り、リニアな加速や安定感のあるコーナリングを楽しむことができる。ただし、MDモードであっても、クルマが黒衣のようにドライバーをアシストする。数多くのセンサーで車両の状況を常時モニタリングし、万が一危険が差し迫った場合にはクルマが最適な回避方法をアシストする。ドライバーはストレスから解放された安全で心地よいドライビングを存分に体験できるというわけだ。

 PDモードとMDモードではヒューマンマシンインターフェイス(HMI)デザインも異なる。「ニッサンIDSコンセプト」のAIと、音声やジェスチャーによるコミュニケーションですべての操作が完結するPDモードでは、インストルメントパネルに大型のモニターだけが配置される。対して、MDモードでは大型モニターが姿を消し、ヘッドアップディスプレイにはスムーズに走るための走行ラインや、フィールドインフォメーションなどが映し出される。

 交通事故の9割以上は、人間の運転ミスが原因で発生している。最先端のセンサーと知能を備えた「IDSコンセプト」は、人間よりはるかに優れた能力で“認知”、“判断”、“操作”を行なう。センサーは人間が見ることができない領域も認知し、AIによって瞬時に運転操作の最適解に導く。その判断を基に電動化された各種システムが運転操作をアシストすることで、交通事故を限りなくゼロに近づけることができるという。

 「ニッサンIDSコンセプト」は、次世代モビリティへの提言ともいえるコンセプトモデルだ。が、「クルマの自動運転」は、自動車メーカーのひとりよがりでは成立しないテーマだ。高度なAIを搭載した「IDSコンセプト」も単なる機械だ。機械には故障やトラブルが付きものだ。当然だが行政機関が管理する交通インフラとの通信やその通信設備の設置費用負担はどうするのか? 事故の際の責任所在など保険会社との関係もどうなるのか? 夢のような“自動運転”コンセプトの見せ方もあるが、ネガティブな問題を解決する施策も自動車を作る会社として方策を示してほしい。(編集担当:吉田恒)