昨年1年間に生産された音楽CDの枚数と金額が14年ぶりに前年を上回ったことが、日本レコード協会の調べで分かった。2012年のCD生産枚数は約2億1517万枚となり、前年比9%増。生産金額は約2246億円で、前年比8%増だった。
1998年のピーク以降、続いていたCD生産の減少に歯止めがかかった形だ。Mr.Childrenや松任谷由実、桑田佳祐、山下達郎、EXILEなど大物アーティストのベスト盤が好調だった。また、音楽などを無許可でダウンロードした場合に刑事罰が科される「改正著作権法」が昨年10月に施行されたことも追い風になったという。
ただし、違法ダウンロードでの摘発を恐れてCDを買った消費者がそれほど多いとも思えないので、やはり大物アーティストのベスト盤による貢献が大きいとみるのが自然だろう。
長期的に見れば、音楽市場は縮小傾向にある。ミリオンセラーの数は90年代後半をピークに減り続けCDの売上は全盛期の98年の半分まで落ち込んだ。シングルCDのミリオンは2007年の『千の風になって』以降、すべてAKB48作品。縮小するCD市場を、握手券などの特典で補う構図となっている。
このようなCDの低迷を補うと見られていた「有料音楽配信」も、2010年には早くも減少に転じている。スマートフォンの台頭により、従来のいわゆる「ガラケー」で主流だった「着うた」や「着うたフル」の需要が減少し、若者を中心に無料動画サイトの利用が拡大したためだ。音楽ユーザーの7割は、1ヶ月あたりの音楽にかける金額が「0円」という調査結果もある 。
2012年のCD売上を支えた大物アーティストのベスト盤は、中高年による購入がメインだった。若者には1200円もするシングルや、3000円以上もするアルバムはコストに見合わない。彼らにとってCDはその役割を変えつつある。
今後もしばらく、CD市場は、握手券など特典付きのものと、中高年向けのベスト盤に支えられる傾向が続くだろう。こうした傾向が続けば、多くの若者はCDのみならず、音楽自体から離れていってしまうかもしれない。音楽業界は、この状態をどう見ているのだろうか。