化粧品に深海の技術――国立海洋研らが製造装置販売

2016年01月27日 08:01

 ナノエマルションという言葉になじみがある人は少ないだろう。しかし、「化粧水の重要な要素」といえば身近に感じるかもしれない。エマルションとは、本来は混ざり合わない水と油を、油を微細な滴にすることで水に分散させる乳化技術、あるいは製造されたものを指す。

 医薬品、機能性食品、機能性化粧品、化学、農業、印刷、塗料、インク、石油など広範な産業分野で使用されている基盤技術だが、最近では油滴を100ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)以下にまで超微細化したナノエマルションが注目を集めている。ナノエマルションを化粧水に使うと、水分を保持しながら、べたつかない製品ができるという。医療分野でも注射剤や点滴剤として既に使用されている。

 このナノエマルションに対して、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)と株式会社AKICOは、ナノエマルションを10秒以内で効率よく製造できる技術(MAGIQ)を共同開発し、3月から販売することを発表した。なぜ海洋研究? というのは、その製造技術に秘密がある。

 微細な油滴を水に分散させる工程に、深海の熱水噴出孔の周りの水温400度以上にもなる高温・高圧環境にある超臨界水では「水と油が自由に混ざり合う」ことを応用して、従来法とは根本的に異なる原理でナノエマルションを製造することに成功したのだ。油を超臨界水に溶解させた後に、油と水を再び急激に分離させ、油の分子を互いに集合させることによって高品質なナノエマルションを製造することができるのだという。しかも、わずか10秒で「高温・高圧機器に関する特別な専門知識がなくても簡便に」(JAMSTEC)製造できることが特徴としている。

 製品型式は「SFW-E40S」で、価格は標準型で730万円。化粧品や医薬品などのメーカーの購入が予想される。JAMSTECでは、「革新的な乳化技術であるMAGIQが、多様な産業分野での様々な製品の研究開発に大きく貢献することを期待している」としている。