世界的化粧品ブランド、資生堂にとってもインド市場の開拓は容易にはいかないようだ。同社の中間層向け化粧品ブランドがインドから撤退を発表。国、文化、美に対する価値観が異なる中での化粧品の展開は想像以上に難しい。
世界各国で高い評価を得てきた日本を代表する化粧品ブランド、資生堂<4911>。しかし化粧品の名門もインド巨大市場ではその実力を発揮できなかったようだ。
資生堂はこの度、インド中間層をターゲットにした中低価格帯メイクアップ・スキンケアブランド「Za(ジーエー)」の販売を終了することを発表した。これに伴い、中間層向け化粧品の販売を目的とした現地販売子会社、Shiseido India Private Limitedも解散する。
今回の「Za(ジーエー)」ブランドは中国、台湾、タイ、香港、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ニュージーランドでも展開しているが、インドでは撤退となった。要因は、当初の予想以上にマーケティング投資がかさんだことだ。同社の発表によれば、採算を見込めるまでにかなり時間がかかると予想し、撤退を決定したという。
解散が決定したShiseido India Private Limitedは2013年7月にムンバイに同社連結会社として設立され、当初は1500店以上の取り扱いを目指していたが、現実は約2年で終了する結果となった。今後は同社高級ライン化粧品の「SHISEIDO」の強化に注力するという。
「Za(ジーエー)」ブランドがターゲットとしていたインドの中間層であるが、この中間層の巨大市場を巡り、現在も世界各国の化粧品会社がしのぎを削ってマーケティング戦略を展開している。
2012年のJETRO発表の「インド化粧品市場調査 」によれば、上位中間層・下位中間層は2025年までに全階層の中でも最大の成長が見込まれているという。
そこに女性の意識・ライフスタイルの変化、社会進出が進むとやはり消費の動向にも大きな変化と拡大が予測され、ここに化粧品各社が狙いをつけている。その中間層向け中低価格帯の化粧品は資生堂以外にもコーセー<4922>が進出しており、今年4月に新ブランド「スパウェイク」を発売した。
しかし、こうした巨大市場の中間層向けマーケティング・販売が期待だけに終わることも多い。同じような巨大市場として期待されていた中国では、アメリカの化粧品大手レブロンやフランスのガルニエが大衆向けブランドを展開したものの撤退している。日本ブランドでも「ドクターズコスメ」として高評価を得ていたドクターシーラボ<4924>が中国から手を引いた。
これからも拡大・急成長するインドの中間層であるが、その大きさ故に中間層の実態や詳細な階層は未だ未知の状態だ。そこに社会情勢の急激な変化、各種インフラの不備、世界各国企業との熾烈な競争が追い打ちをかける。
インド市場は今後も期待できる価値の高い市場ではあるが、こうした荒波を徹底したマーケティング戦略で乗り越えていかなければならないのは必至のようだ。(編集担当:久保田雄城)