コメダ珈琲というチェーンの喫茶店をご存じだろうか。コメダ珈琲は1968年に創業。独特の喫茶店文化が根づいている名古屋や東海地区を中心に、関西、関東、北陸などで現在480店舗を展開する。
国内の喫茶店数は1980年前後がピークで、15万5000軒ほどあったが、今はその半数まで減った。その原因はいろいろと考えられる。たとえばファミリーレストラン、ファストフードなどを「喫茶店がわり」として利用する人が増えた。セルフカフェスタイルの流行なども喫茶店減の要因だろう。立地によって客数が大きく左右する上に、回転率など効率はけっしてよくない業態だけに、「開業はたやすいけれど、維持は難しい」(外食産業関係者)ともいわれている。
喫茶店業界に逆風が吹く中でコメダ珈琲が例外的に店舗を急増させているのには、「名古屋式」と呼ばれるサービスがあるようだ。コメダ珈琲の客席は1席、1席が広い。一般紙、スポーツ紙、雑誌などが充実している……といえば、客の回転率を下げる原因になりそうだが、コメダ珈琲では瞬間的な客回転率はそれほど重視していない。飲み物メニューを頼めば必ずお茶うけの菓子がついてくる。客の好き嫌いなどでメニューを個別にアレンジする。一見すると無駄と思えるような手間を客にかけているのだ。
「食材の仕入れやメニュー展開には、ものすごく効率的な部分があるけど、それが表に出ないところが、このチェーンのすごいところ。もてなしてほしい客にはしっかりもてなし、放っておいてほしい客にも納得のつかず離れずの絶妙の距離感で接してくれる。しかも長居をしても嫌な顔をされない。単価はけっして安くはないけれど、居心地も含めて『お値打ち』で、リピーターが増える」(前出の業界関係者)