15年の出版業の倒産は38件 2年連続で増加へ

2016年02月05日 08:28

画・テレヒ_と運命をともにして? テレヒ_情報誌「TVひ_あ」か_休刊へ

若者の活字離れやデジタルデバイスの普及に伴うメディアの多様化などを背景に、2015年の出版物の販売額は1兆5,220億円(前年比5.3%減、出版科学研究所調べ)と11年連続で前年を割り込んだ。

 若者の活字離れやデジタルデバイスの普及に伴うメディアの多様化などを背景に、2015年の出版物の販売額は1兆5,220億円(前年比5.3%減、出版科学研究所調べ)と11年連続で前年を割り込んだ。こうした業界を取り巻く厳しい環境を背景に出版業の倒産は増勢をたどっており、今後の展開も楽観できない状況が続いている。

 東京商工リサーチによると、2015年(1月-12月)の出版業の倒産は38件で2014年(35件)より3件増加した。1996年以降の20年間では4番目に少なかったが、2013年(33件)を底に2年連続で増加した。2015年の全産業の倒産は8,812件と7年連続で減少をたどっており、対照的な状況が際立つ結果となった。
 
 過去20年間の出版業の倒産は一進一退はあるが漸増傾向をたどり、2009年にはリーマン・ショックによる景気低迷も影響して最多の72件を記録した。その後、中小企業金融円滑化法などの資金繰り支援策で2010年からは50件以下に落ち着き、2013年は33件まで減少した。円滑化法終了後も資金繰り支援策が継続されたため、全産業の倒産は引き続き減少傾向にあるが、出版業界は出版物の販売額が下げ止まらず、倒産は再び増加傾向に入っているとしている。

 原因別でみると、最多は「販売不振」の26件(構成比68.4%)だった。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」6件(同15.7%)、「他社倒産の余波」4件(同10.5%)と続く。

 2015年の全産業の倒産8,812件のうち「販売不振」は5,959件(同67.6%)であり、出版業の「販売不振」を原因とした倒産は構成比率で全産業の平均を上回ったことになる。また、「既往のシワ寄せ」が前年と比較し6倍へ急増。慢性的な業績不振による赤字経営で行き詰まった企業が目立つ。他業界と比較して、出版業は不況型倒産の比率が84.2%と高く(全産業比率81.1%)、苦境に喘ぐ業界の姿を反映した格好となったとしている。

 2015年の出版業の倒産は2年連続で増加した。最大の負債となった(株)美術出版社(TSR企業コード:291054854、法人番号:8011101018022、千代田区、社名・住所は当時)で発行していた「美術手帖」は新設法人に引き継がれた。だが、(株)パッチワーク通信社(TSR企業コード:295100303、法人番号:2010001006431、東京都文京区)が発行していた「パッチワーク通信」などの定期刊行物は倒産により休刊(事実上の廃刊)となった。出版業界は文化の編み手でもある。出版社の倒産は、育まれてきた文化を縮減させることにもつながりかねないとしている。

 また、出版物の販売額は10年以上にわたり減少をたどっているが、その影響は全国各地で書店(小売店)の廃業や他社資本の傘下入りなどの動きにつながり、昨年6月には中堅の出版取次業者だった栗田出版販売(株)(TSR企業コード:290047668、法人番号:9010001145652、千代田区)が民事再生法の適用を申請している。

 2016年3月、金融円滑化法後の資金繰り支援スキームの一つとして中小企業再生支援協議会が取り組んできた暫定リスケが終了する。また、経済産業省は信用保証協会の責任共有制度の見直しを進めている。このように倒産を抑制してきた政策の見直しが論議されているが、政府や金融機関は企業の財務内容や現状把握にとどまらず、将来性を重視する「事業性評価」への本格的な取り組みを進めていく。このため今後は、これまで以上に市場性や出版業者としての有益性を問われてくることになると分析している。(編集担当:慶尾六郎)