厚生労働省が10月に発表した、平成 26 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は188,057件(前年度185,803件)と前年度よりも2254件増加しており、児童生徒1000人あたりの認知件数は13.7件となった。
いじめ問題がこれだけ毎日のようにメディアやネットで取り上げられても一向に減らず、むしろ増えている背景には、どういう理由があるのだろうか。文部科学省では、いじめの原因と背景を大きく3つの問題に分類している。
まず一つ目は、児童生徒の問題。対人関係の不得手、表面的な友人関係、欲求不満耐性の欠如、進学をめぐる競争意識など、生徒間同士の問題だ。
そして2つ目は、家庭の問題。核家族や少子家庭の増加による人間関係スキルの未熟さや、逆に親の過保護や過干渉によって、幼児期の欲求不満耐性の習得が不十分であることなどが考えられる。また、親の価値観も多様化しており、それが子供に影響して、協調性や思いやりの欠如、規範意識の欠如などを招いているという。
3つ目は、学校の問題。これはニュースなどでもよく取沙汰されるが、教師のいじめに対する認識不足や、教師と生徒の交流が不十分であることがあげられる。また、受験社会のストレスや、生活指導など管理的な締め付けが強いと、異質なものを排除しようとする傾向が生じやすい、という集団心理的な要因もあるようだ。
では、どうすれば、いじめは減少するのか。原因がある程度分析できているのだから、それを排除すればいいのは誰でもわかることだが、一筋縄ではいかないところが、いじめ問題の難しいところだ。
その一つのアプローチとして、読書習慣がある。東京都葛飾区立上平井小学校では、毎朝、児童と教師が朝の読書をしているという。同校でも、この「朝の読書」を取り入れる以前は、いじめだけでなく、教師への反抗や器物破損、授業の不成立、不登校など、学校崩壊に近い状況だったという。ところが、この読書習慣を導入して3年後にはそういった問題は沈静化したという。
また、一般財団法人 出版文化産業振興財団(JPIC)も、「あしたの本プロジェクト」などをはじめとする、子どもの健全な育成を図るための読書推進活動や、それを支える大人の人材育成を全国各地で実施している。
さらに、ミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場も、子供たちの豊かな心を育む活動として、小学校に本を贈る「みつばち文庫」を実施している。これは同社が1999年から続けている活動で、「人と自然」「命の大切さ」などをテーマにした書籍を同社が購入し、小学校に寄贈しているもので、これまで16年間で計50,901校に59,2298冊の書籍を寄贈している。今年は、インターネットを通じて公募で資金を募る「クラウドファンディング」を初めて導入し、寄贈先の数や認知を増やす試みも行っている。
優れた本は、子供たちの豊かな心と想像力を育む。子供たちは、言うまでもなく、社会にとってかけがえのない財産だ。大人には、自身の子供だけでなく、その友人や、地域の子供たちを守り、共に育てる責任がある。地域コミュニティの連携が希薄になってしまっている現代社会だからこそ、学校や企業、団体などの積極的な読書習慣への取り組みの重要性は、今まで以上に増しているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)