紙の出版物、落ち込みが止まらない。本屋も激減し、雑誌は前年比91.6%

2016年02月06日 19:44

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紙のメディアが前年割れとなるのは11年連続、前年比94.7%だった。減少率は1950年に調査を始めてから過去最大だ。とくに稼ぎ頭の雑誌の落ち込みが深刻で、雑誌は前年比91.6%と大きく落ち込んだ

 公益社団法人の全国出版協会・出版科学研究所(東京新宿)は、2015年の新聞や雑誌、書籍などのペーパーメディアと称される紙の出版物の推定販売額を発表した。

 全国出版協会・出版科学研究所は、出版業界並びに関連諸産業の発展に貢献すべく、業界唯一の調査研究機関として、出版物の動態調査、統計業務、資料収集等の諸活動を行なう組織。調査研究の成果として冒頭のような報告のほか、レファレンスサービス、資料閲覧、出版セミナーの開催などで出版情報の調査・研究を手がける。

 同研究所の報告によると、2015年「紙の出版物の推定販売額」は、2014年比5.3%減の1兆5220億円だった。減少率は1950年に調査を始めてから過去最大。とくに稼ぎ頭の雑誌の落ち込みが深刻で、出版市場は底入れの兆しが見えていない。前年からの1年間で850億円の売上を失ったということは、ジュンク堂や有隣堂クラス(業界2~4位程度)の大型書店チェーン企業が2社潰れた勘定だ。

 今回の発表によると、紙のメディアが前年割れとなるのは11年連続。減少率は14年の4.5%減を上回り、過去最大だ。書籍は240万部を超える大ヒット作となった又吉直樹氏の「火花」などに代表される文芸書が比較的好調で前年比98.3%の7419億円にとどまったが、雑誌は同91.6%の7801億円と大きく落ち込んだ。雑誌販売衰退に歯止めがかからない状態だ。ペーパーメディア市場のピークは1996年の2兆6563億円で、その年の市場規模に比べると4割以上落ち込んだことになる。

 一方、今回から調査対象に加えた電子出版の市場規模は1502億円で、2014年比131.3%と大きな伸びを示した。しかしながら、紙媒体の落ち込みを補うほどには伸びていないのが現状だ。

 ペーパーメディアの流通を担っているのは出版社、取り次ぎと言われる卸し商、書店の3者だが、それらすべてで経営環境が厳しくなっている。書店の閉店が相次いでおり、残る書店からの本の返品率は4割に達するとされる。返品する際の梱包や物流費用が書店と取り次ぎの収益を圧迫している。

 昨年6月には、取り次ぎ4位の栗田出版販売(東京・千代田)が法的整理に追い込まれ、今年業界3位の大阪屋(大阪府東大阪市)と経営統合する見通し。首位の日本出版販売と2位のトーハンも減収基調に歯止めがかかっていない。

 出版業界、なかでも雑誌の不況は、なによりもスポンサーの減少が大きい。「雑誌が売れない」「発行部数が減る」、ゆえに「広告出稿が減る」。「広告収入が減った」出版社は「雑誌を廃刊せざるを得ない」という“負のスパイラル”が2000年以降続いている。

 また、街のどこにも本屋がない。そんな市町村が増えている。首都圏でも、筑波研究学園都市に隣接する茨城県「つくばみらい」市のように、全国の4市が「書店ゼロの市」で、国内自治体の17%にあたる317市町村が「書店ゼロ」の街となっている。「ネット通販で買えるから、本屋は要らない」という声もあるが、「立ち読みしてから買える」のが、“本屋の良さ”だ。

「立ち読みできる“ネット書店”でも作らない」ことには、日本のペーパーメディアは消滅するかもしれない。(編集担当:吉田恒)