「緊急事態条項」追加の危険性

2016年02月06日 11:08

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防衛省勇退幹部の中には「憲法9条こそ安全保障の障害」とする発言まで出る憂慮すべき状況にある。

 日米安保条約の「片務性」の解消、集団的自衛権行使の「限定的枠組み」解消という安倍総理が目指す次へのステップが「憲法9条(戦争の放棄)」規定の前に進めないもどかしさが今国会、衆院予算委員会などでの総理答弁に滲んでいる。

 一挙に改憲まで上り詰めたいというのが、総理の本音なのだろう。防衛省勇退幹部の中には「憲法9条こそ安全保障の障害」とする発言まで出る憂慮すべき状況にある。

 「戦力不保持」(憲法9条2項)の規定の下で「自衛のための必要最小限度の防衛力」を整備してきた日本だが、その枠内においての防衛装備であっても、現在の装備、防衛予算規模にまで拡大してきた。この枠組みが変更、削除された場合の先が見えない。無制限の軍拡に歩み出す怖さは否定できない。

 安倍総理は戦力不保持を規定する憲法9条2項について「われわれ(自民党)は憲法9条についても、2項は変えていくとお示ししている」と国会答弁し、「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだとの考え方もあり、私たちの手で変えていくべきだとの考えの下で自民党の憲法改正草案を発表した」と答弁している。

 そのうえで4日の衆院予算委員会で民主党の大串博志議員が今夏の参院選挙に憲法9条の改正も争点にする考えはあるのかと質した。安倍総理は「9条の改正には国民の議論が熟していない」と答えた。争点にすることが不利と判断したのだろう。

 一方で、9条改正に匹敵する重要案件を提起している。憲法への「緊急事態条項」の創設だ。自民党の憲法改正草案では、緊急事態宣言で内閣が法律と同じ効力を有する政令を出せる。国民の居住移転の自由や財産権など人権に関する制限もかけられ、いわば時の政府に全権が集中する状態になる。権力を監視し暴走をとめチェックする国会機能を停止させてしまうものだ。国家の非常事態にこそ、国会のチェック機能は有効に働かねばならない。9条改正に匹敵する重要案件といえよう。

 民主党の大串議員も「災害や有事など緊急時に国民がどのように振る舞うかは議論すべき話ではあるが、これ(緊急事態条項)は憲法を一時停止する、全権を内閣総理大臣に集中させるという条項だ」と問題視した。大串議員は「(安倍総理は緊急事態条項が)必要だということがまずありきで、思考停止になっているのではないか。憲法を停止するような大変重い内容で、安倍総理の下での憲法の議論は進め難い」とけん制した。まさに、未来の子どもたちのために、国民1人ひとりが立ち止まって冷静に考えなければならない。(編集担当:森高龍二)