矢野経済研究所では、パワー半導体の世界市場について調査を実施した。調査期間は2015年9月~2016年1月、調査対象はパワー半導体メーカ、ウエハーメーカ、システムメーカ等。調査方法は同社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用した。
それによると、2015年のパワー半導体世界市場規模は、前年比 7.0%減の148 億2,000万ドルの見込みであるという。マイナス成長となった要因として(1)中国と欧州市場の景気減速による需要低迷、(2)民生機器用電源の成長鈍化、(3)参入メーカ増によるコスト競争の3点を挙げている。
民生機器についてはPCやFPD(フラットパネルディスプレイ)用電源向けMOSFETの受注が2015年に入ってから落ち込み、2015年上期(2015年1~6月)は低調に推移した。このため、民生機器向け電源の生産拠点が集中するアジア向けのダイオード、MOSFETの出荷金額が落ち込み、前年比でマイナスとなっている。2015年下期からは在庫調整が一段落し、2016年製品モデルへの受注が入り始めていることから、市場は緩やかな回復基調となっているとした。
産業分野の中でもサーボモータ、UPS(無停電電源装置)向けは好調であった。精密な位置決めが可能なサーボモータは、産業用ロボット、NC工作機械、半導体製造装置などで使われている。2015年は自動車とスマートフォンの出荷が好調であったことから、産業用ロボットやNC工作機械の需要が伸び、サーボモータ用IPMの数量拡大に繋がっているとしている。
一方、自動車向けパワー半導体も堅調に推移している。電装品の増加に伴い車両一台あたりの ECU(Electronic Control Unit)の数は増加傾向で、ECUに実装されるダイオードやMOSFETの需要が伸びている。低燃費に直結するアイドルストップシステム(ISS)や電動パワーステアリング(EPS)市場の伸びは一段落しており、今後は HV(ハイブリッド車)/EV(電気自動車)市場の拡大、LEDライトの普及、ISO26262(自動車用機能安全規格)への対応、ADAS(先進運転支援システム)向けセンサ(レーダやカメラ)の数量拡大が自動車向けパワー半導体の新しい牽引役となるという。
2020年のパワー半導体世界市場規模は231億ドルになると予測している。2014年から 2020年までの年平均成長率(CAGR)は6.4%になり、2020年の市場規模は2014年の1.5倍に拡大するとみる。2020年以降も産業と自動車向け需要が市場を牽引し、パワー半導体の2025年の世界市場規模は339億1,000 万ドル、2020年から2025年までの年平均成長率は8.0%と予測した。
産業分野については、新エネルギー、サーボモータ、UPS、鉄道向けパワー半導体の需要が増加するという。太陽光発電は日本、米国、風力発電は欧州が主な需要の中心となる。また、産業用ロボットや NC 工作機械、半導体製造装置も堅調に推移することから、サーボモータ向けIPM が増加する。鉄道は中国市場以外に、東南アジア、インド、南米における投資が見込めるとしている。
2020年以降は東南アジアや中南米でも電力設備などのインフラへの投資が活発化すると推測される。このため、耐圧 3.3kV以上のIGBTモジュールの出荷数量が伸びるとしている。(編集担当:慶尾六郎)