京セラ<6971>、日本電産<6594>、村田製作所<6981>、ローム<6963>、オムロン<6645>のエレクトロニクス「京都5社」は、FA・制御機器が主力のオムロン以外の4社は、電子部品セクターで今や日本を代表するメーカーになっている。
その4~9月期(第2四半期)決算は明暗がはっきり分かれた。京セラ、日本電産、村田製作所、ロームは大幅増益、オムロンは大幅減益という結果だったが、通期業績見通しは村田製作所は上方修正、日本電産は修正なし、京セラ、ローム、オムロンは下方修正(ロームは最終利益は小幅に上方修正したが大幅減益)している。中国や新興国の経済の変調が下半期の見通しに影を落としている。
しかし、4~9月期が増益でも減益でも、今期の通期見通しが上方修正でも下方修正でも、中・長期的な展望と明確な戦略のもと、将来も長く成長を維持するために海外M&Aに積極的な姿勢を崩さない。それが京都5社のたくましさだ。
■京セラ、日本電産、村田、ロームは大幅増益 京セラ、ローム、オムロンは通期下方修正
京セラの4~9月期決算は、売上高は1.2%増の7225億円、営業利益は13.1%増の619億円、四半期純利益は14.5%増の780億円、最終四半期利益は16.4%増の507億円という増収、大幅増益だが、4~6月期に比べると増益のペースが鈍った。中間配当は前年同期比10円増の50円。車載用カメラ部品など自動車向けは好調。太陽電池は、国内向けの家庭用は太陽光発電の買取価格引き下げ、電力会社の接続停止などが影響を及ぼし、産業用も受注で苦戦しているが、北米向けは売上を伸ばした。セラミックパッケージなどスマホ向け半導体部品は中国の景気減速で「中国製スマホが売れなくなり影響を受けている」(山口悟郎社長)という。機器事業の携帯電話は海外で上級モデルのモデルチェンジを進めたため販売台数が減った。
京セラは通期業績見通しの売上高を700億円減らして4.8%増から0.2%増の1兆5300億円に、営業利益を500億円減らして71.3%増から17.7%増の1100億円に、税引前当期純利益を440億円減らして51.0%増から14.9%増の1400億円に、当期純利益を350億円減らして3.6%増から26.6%減の850億円に、それぞれ下方修正した。期末配当予想は前年同期比で10円減の50円、予想年間配当は前期と同じ100円。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は59.7%だった。中国経済の減速が懸念され、ヨーロッパや新興国の経済の先行きにも不透明感が高まっているという前提で、デジタルコンシューマ機器の生産台数は期初の想定を下回る見通し。自動車関連、産業機器関連も拡大ペースが鈍化すると予想し、業績見通しを下方修正した。最終利益の減益には電子デバイス事業での構造改革費用計上も影響する見通し。
日本電産の4~9月期決算は売上高は20.0%増の5873億円、営業利益は19.1%増の618億円、四半期純利益は23.0%増の634億円、最終四半期純利益は29.7%増の476億円という2ケタ増収増益。中間配当は前年同期から10円増の40円。連結売上高、営業利益、税引前利益、最終純利益の全項目で中間期ベース過去最高を更新した。四半期ベースでは2013年1~3月期の魔が差したような営業赤字から立ち直って以来、営業利益は10期連続の増益。モーターは家電向けも自動車向けも好調が続き、家電向けの省エネ型小型モーターの新製品が好評。為替の円安も営業増益に約84億円寄与した。
日本電産の通期業績見通しは、売上高は11.8%増の1兆1500億円、営業利益は17.2%増の1300億円、当期純利益は17.7%増の1260億円、最終当期純利益は18.4%増の900億円という3期連続の最高益で修正はなし。前期と同じ期末配当40円も、前期比10円増の予想年間配当80円も変わらず。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は52.9%だった。運転支援システムの車載カメラやセンサーなど自動車向け、小型振動部品などスマホ向けは永守重信会長兼社長が「非常に強い」としたものの、中国の景気減速の影響がエアコン部品など一部に生じていて、先行きの不透明感が強いのが通期見通し据え置きの理由という。
村田製作所の4~9月期決算は、売上高は28.0%増の6098億円、営業利益は70.7%増の1521億円、税引前四半期純利益は64.0%増の1563億円、最終四半期純利益は68.4%増の1153億円。「スマホと自動車」向けの強さに為替の円安効果も加わり2ケタの大幅増収増益だった。中間配当は前年同期から20円増の100円。6割の増収をみせたスマホ向け部品ではコンデンサー、フィルターとともに、高速通信用のLTE通信モジュールなど超小型で付加価値が高い機能部品が好調。高水準の受注が続き、村田恒夫社長は「部品の搭載点数が多いLTE端末の普及が加速している」「スマホ向け部品の成長は2、3年続く」と話している。
村田製作所は通期業績見通しについて、売上高を400億円上積みして11.2%増から15.0%増の1兆2000億円に、営業利益を220億円上積みして16.5%増から26.8%増の2720億円に、税引前当期純利益を240億円上積みして5.7%増から15.8%増の2760億円に、最終当期純利益を190億円上積みして9.1%増から20.4%増の2020億円に、それぞれ上方修正した。予想期末配当は前期と同じ100円、予想年間配当は前期比20円増の200円で修正はなかった。4~9月期最終利益の通期見通しに対する進捗率は57.1%。通期の研究開発費も20億円積み増した。LTE化が進むスマホ、電装化が進む自動車では1 台あたりの部品数が増加しており、高機能化で部品単価も上昇している。それによる電子部品需要の今後の見通しの明るさと現時点の為替水準が、上方修正の理由という。
ロームの4~9月期決算は、売上高は4.0%増の1896億円、営業利益は10.3%増の234億円、経常利益は15.0%増の327億円、四半期純利益は21.6%増の261億円という増収、2ケタ増益。中間配当は前年同期比20円増の65円とした。売上高は中国の成長鈍化を背景に当初予想を下回ったが、利益は為替レートが想定よりも円安傾向になったことで経常利益、当期純利益が当初予想から大幅に上回った。自動車向け、産業機器向けの半導体、スマホ向け小型部品が好調で、増収効果が減価償却費、研究開発費のコスト増を吸収した。
ロームは通期業績見通しを、売上高は250億円減らして7.0%増から0.1%増の3630億円に下方修正、営業利益は80億円減らして8.2%増から12.4%減の340億円に下方修正。経常利益は32.5%減の400億円で修正なし。当期純利益は10億円上積みして33.8%減から31.6%減の310億円に上方修正した。前期比20円減の予想期末配当65円、前期と同じ予想年間配当130円は修正なし。4~9月期の通期見通しに対する進捗率は、経常利益は68.8%、最終利益は84.4%でともに50%を大きくオーバーしている。下方修正の理由としては中国の成長鈍化とそのアジア諸国への影響、パソコン市場の飽和、スマホ、自動車、産業用機器向け市場のゆるやかな調整局面入りを挙げている。
オムロンの4~9月期決算は、売上高は2.2%増の4134億円、営業利益は23.3%減の329億円、税引前四半期純利益は27.2%減の327億円、最終四半期純利益は27.3%減の244億円という増収、2ケタ減益。中間配当は前期比3円増の34円とした。制御機器事業は堅調で電子部品事業、車載事業、ヘルスケア事業も増収だったが、環境事業は太陽光発電、バックライト事業は中国のスマホの需要減が影響して減収だった。利益面は「成長のための」販管費、研究開発費が増加して減益になった。
オムロンの通期業益見通しは、売上高を400億円減らして6.2%増から1.5%増の8600億円に、営業利益を200億円減らして3.9%増から19.2%減の700億円に、税引前当期純利益を180億円減らして1.8%増から18.8%減の710億円に、最終当期純利益を130億円減らして7.0%増から13.9%減の535億円に、それぞれ下方修正した。利益3項目は増益予想が減益予想に変わっている。予想期末配当は前期と同じ40円、予想年間配当は当初予想の92円を18円下方修正して前期比3円増の74円とした。4~9月期の最終利益の通期見通しに対する進捗率は45.7%だった。業績見通し下方修正の理由は第一に中国経済の減速の影響が出ているため。新興国を中心にグローバルで不透明感が増していると説明している。それでも電子部品、車載、ヘルスケアの各事業とも増収を見込み、制御機器事業は石油、天然ガスの市況低下の影響を受けながらも増収を想定。「制御機器事業の最強化」戦略で制御機器、電子部品の事業は増益を確保できるとしている。