日本では、2025年に高齢化率(65歳以上人口割合)が30%を超える超高齢社会を迎える。要介護の割合が高まる後期高齢者が2,179万人となり、「平成27年版高齢社会白書」によると現在より約530万人の増加が見込まれている。
一方、介護業界では、介護の担い手である介護人材の不足という課題を抱えており、介護職員の業務負荷の軽減が求められている。排泄や入浴などの身体的介護以外でも、居室で過ごす高齢者の状況把握や、限られた人員で行われる夜間巡回などは、負荷の高い業務となっている。このように、介護事業者・高齢者住宅事業者からは、入居者にとっての安心・安全な住空間の提供と同時に、介護職員の業務負荷軽減を実現する、先進的な見守りの仕組みが求められている。
これを受け、パナソニック<6752>と富士通<6702>は、パナソニックのクラウドサービス対応型エアコンと富士通の非接触型生体センサーを融合した高齢者住宅向け見守りサービスの共同実証実験を、パナソニックグループが運営するサービス付き高齢者向け住宅「エイジフリーハウス豊中庄内栄町」で6月より1年間、実施すると発表した。
この実証実験では、クラウドサービス対応型エアコンによる部屋の温湿度といった住空間情報と、非接触型生体センサーによる入居者の睡眠状態、在・不在状態といった生活情報を検知する。これらの入居者のリアルタイムな住空間情報と生活情報を、パナソニックの見守りシステムに集約し、介護職員に提供するとともに、個人ごとの生活パターンに即したアラート通知(在室時の熱中症危険温度、睡眠中の高頻度な覚醒など)の実現を目指す。
さらに、介護職員が入居者の生活状態に応じて空調を遠隔制御する仕組みの実証も行う。これにより、遠隔からの状態把握と空調管理を実現し、安否確認業務の負担軽減と、入居者およびその家族にとって安心・安全な住空間作りを目指す。
パナソニックは、「スマート家電」を業界内でいち早く商品化し、遠隔地からのオン/オフ制御や温湿度の確認といったサービスを家庭用エアコンを介して提供している。また、エアコンで快適な睡眠環境をサポートする「おやすみナビ」など、各種住空間向けサービスの展開に取り組んでいる。
一方富士通は、ICTを活用し、安全で豊かな、持続可能な社会づくりに貢献する「Human Centric Intelligent Society(ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ)」を標榜。これまでにも、様々なセンサー技術を開発し、センサーから収集したデータを分析・活用する取り組みを行っている。今回、両社の技術の融合により、介護職員の業務負荷を軽減させる新しい見守りサービスを共同で開発し、このたび実証実験にて効果検証を行う。
両社は実証実験を通じ、パナソニックグループが運営するサービス付き高齢者向け住宅「エイジフリーハウス」での受容性・効果検証を行ったのち、高齢者住宅向けに2016年度中のサービス提供を目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)