原発の安全性を『科学的根拠のみによって審査する』原子力規制委員会の真価が問われる判断が北陸電力志賀(しか)原子力発電所(石川県)の1号機原子炉建屋直下の『断層』で試されることになった。
今月3日の原子力規制委員会の有識者会合は建屋下を通る断層は「活断層と解釈するのが合理的」との評価を決定した。
原子力規制委員会が有識者会合の評価決定を重要な知見とし『活断層』と判断すれば、当然、活断層の上に原子炉建屋は認められないことから『1号機は廃炉』となる。
電力需要や企業の投資への配慮、電力販売自由化など社会的な諸々の状況は、原子力規制委員会の『断層』判断に一切影響されてはならない。これは判断の原則だ。
北陸電力は『活断層ではない』と強く主張する。志賀原発は東電福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉で1号機は1993年に運転開始し、2011年3月から定期点検のため運転停止中。
有識者会合は「より正確な判断には建設当時の地層写真やスケッチ、敷地周辺の断層の更なる調査でデータを拡充する必要」も指摘している。北陸電力は「活断層ではない」と主張するなら、こうしたデータ収集に協力し、積極的に判断データを規制委員会に提出することが必要だろう。
今回の専門家会合では2号機についても課題を提起した。冷却用の海水を取り込む重要配管の下を通る断層についても「活動した可能性がある」とした。活断層とすれば、当然、配管移設などの問題が浮上する。こちらの断層についてもデータ拡充が求められることになる。
北陸電力にすれば早期の再稼働を求めたいはずだが、事は安全性の問題であり、経済論理より、事業者にとっては最悪のシナリオの廃炉も視野に、公益性の高い事業者としての「原子力規制委員会の結論に対する」真摯な対応を求めたい。
北陸電力が、3日の有識者会合の評価書を「あくまで参考意見に過ぎず」といい、自社にとって不都合な評価に聞き入れる真摯さが見えないように思えるのは筆者だけではないだろう。原発の重大事故が発生した場合の取り返しのつかない深刻で、甚大な被害を500億円投資したからという企業論理で考えてほしくない。
廃炉を選択しないとすれば、専門家会合が指摘する「より正確な判断のための建設当時の地層写真、スケッチ、敷地周辺の断層の調査の拡充を」再稼働のスケジュール感でなく、両者が納得できるまで徹底して調査・分析し、科学的なゴールを目指すことが求められている。そのために原子力規制委員会は本領を発揮することを期待する。(編集担当:森高龍二)