老化を抑制するサーチュイン遺伝子、空腹状態で活性化

2013年01月31日 08:26

  映画やアニメの世界でも度々取り上げられるテーマの一つに「不老不死」や「若返り」がある。不老不死や若返りとまではいかなくても、せめて老化を少しでも遅らせることができたならと、願わない人はいないだろう。

  エステやフィットネス、健康食品など広告や商品に躍る「アンチエイジング」の文字。今や「アンチエイジング」という言葉を耳にしない日はないくらい、若さを保つことは我々人間にとっての大きな関心ごとなのである。

  アンチエイジングを語る上で、今最も注目されているのがサーチュイン遺伝子だ。サーチュイン遺伝子は別名「長寿遺伝子」「若返り遺伝子」などと呼ばれ、テレビ番組などでも度々取り上げられている。

  サーチュイン遺伝子は、老化やがんの原因とされる活性酸素の抑制や、免疫抗体の活性化、さらに全身の細胞遺伝子の修復効果など、さまざまな老化防止機能をもつといわれている。実は、現時点ではまだ研究段階であり、人間の寿命に対する効果が学術的に証明されているわけではない。しかしながら、サーチュイン遺伝子を活性化したショウジョウバエの寿命は30%、線虫の寿命は50%も延びることが判明しており、人間にもあてはまる可能性が高いとみられている。

  では、どうすればサーチュイン遺伝子を活性化できるのか。その最も簡単な方法は「空腹」状態になることだという。空腹状態になると、サーチュイン遺伝子が活性化し、細胞内にある老廃物を排除するオートファジーという機構が働いて、細胞が若々しくなるというのだ。これは動物としての防衛機能と考えられており、体内の養分が不足すると、細胞レベルの損傷を防ぐために自己修復機能が活性化するということらしい。

  サーチュイン遺伝子と摂取カロリーに対する研究は世界中の様々な研究者が行なっているが、中でも有名なものは、米ウィスコンシン大学がアカゲザル76頭を使って、20年もの長期に渡って行なったカロリー摂取制限の実験だ。

  20年間、食事制限を受けなかったサルのグループは、通常通り年相応に体毛が抜け、身体にもシワが多くみられた。それに対し、30%のカロリー制限を受けて育てられてきたサルのグループは、27歳以上で老齢期にあるにもかかわらず、体毛は未だフサフサで、肌にも張りとツヤがみられ、若々しさに溢れていたらしい。

  また、カロリー制限なしのグループ38頭中14頭が、20年以内に死亡していたのに対し、カロリー制限を受けていたグループの方で死亡していたのは、たった5頭。さらに、がんや糖尿病、心臓病、脳萎縮などの疾病も少なかった。この実験結果から、少なくともサルに関しては、カロリー制限をすることが寿命や老化に何らかの影響を及ぼしている可能性が高いことが確認されたといえる。

  サーチュイン遺伝子の研究は、まだまだ始まったばかりだ。とはいえ、適度なカロリー制限を実践することは、ダイエット効果だけでなく、最高のアンチエイジング効果をもたらしてくれることだけは、どうやら間違いなさそうだ。(編集担当:藤原伊織)