半導体メーカーのロームが、スマートフォンやデジタルカメラなど小型・薄型が求められる電子機器向けに、ファストリカバリダイオードとして世界最小となる「VML2」パッケージを開発したと発表。4月にはサンプル出荷を開始しており、7月から月産100万個の体制で量産を開始する予定とのこと。スマートフォンや音楽プレーヤーなどに利用されるショットキーバリアダイオードにも「VML2」パッケージを展開し、用途別に7製品をラインナップしている。
ファストリカバリダイオードとは、電流の逆流が起きてしまう時間を短くする、つまりリカバリー時間(逆回復時間)が早いダイオードのこと。 近年、スマートフォンやデジタルカメラをはじめとする携帯機器の小型・薄型化が加速するにつれ、あらゆるセットの省スペース化、高密度実装が可能な小型部品へのニーズが高まっている。加えて、デジタルカメラはもちろん、スマートフォンでも内蔵ストロボが搭載されるようになり、それに合わせて高耐圧へのニーズも高まっていた。このストロボ回路に用いられるのがファストリカバリダイオードである。スイッチング損失を大幅に低減し、ロスの少ない高速スイッチングが可能であるものの、ニーズに合わせて耐圧を保持したままパッケージを小型化するには放電などの課題も多く、実現していなかったという。
ロームは、フレームのデザインや組み立てプロセスを見直し、パッケージを最適化することでこの課題をクリア。1.0mm×0.6mmというファストリカバリダイオードとして世界最小サイズの「VML2」パッケージを開発したとのこと。2.5mm×1.3mmという従来のサイズと比べ、体積を約86%削減し、小型でありながら450Vという高耐圧も実現したという。
ディーツーコミュニケーションズの調査によると、全国の男女15歳~69歳における普及率は23.6%と、2011年調査の7.6%から大幅に上昇しているスマートフォン。市場に浸透するにつれ、他製品との差別化のため、ますます多機能化・高機能化が進むであろう。その際、かつてデジタルカメラブランドの名を冠した携帯電話が市場に溢れたように、カメラ機能の高性能化を謳う製品が多く誕生することは想像に難くない。今回ロームが開発した、ストロボ回路に用いられるファストリカバリダイオードは、その動きを加速させる大きな原動力となるであろう。