今なお現役で活躍する日本の文化・産業を形成してきた文化的財産・有形文化財

2016年05月21日 21:13

相模原 (2)

軽井沢の別荘地に今でも使用されているプレハブ住宅が有形文化財に指定されることが決定して話題になった。

 東京オリンピックを4年後に控え、海外諸国からの日本に対する注目も高まっている。外国人観光客にとって、日本古来の独特の文化や文化財などに対する関心は深いようで、中には一般的な日本人よりも日本の文化に精通している人も少なくない。

 日本には数多くの国宝や文化財がある。文化庁の発表によると、2016年4月1日現在、文化財保護法によって定められた日本の国宝は1097件、重要文化財は13057件。史跡名勝天然記念物は、通常が3179件(実質指定3067件)、特別指定が172件(実質指定162件)、そして、登録有形文化財(建造物)が10516件、登録有形文化財(美術工芸品)が14件となっている。他にも、無形文化財、民俗文化財などがある。改めて数字を見てみると、日本には多くの文化的な財産があることが分かって面白い。

 国宝や重要文化財は言うに及ばず、登録有形文化財も、歴史的価値、文化的価値の高いものばかりだが、登録有形文化財に指定された建造物などはとくに、現在も現役で活躍している建物や我々の今の生活に密着したものも多く、そういう意味では現在進行形の生きた文化財といえるかもしれない。

 例えば、今、若者を中心に絶大な人気を誇るスターバックスコーヒー。その弘前公園前店が使用している建物は、もともとは1917年(大正6年)に建設された旧第8師団長官舎で、国の有形文化財として登録されている建物だ。同社は、神戸三宮でも有形文化財の建物の中に出店しており、神戸北野異人館店として営業している。

 1910年(明治43年)に完成し運用を開始した中部電力の水力発電所である長良川発電所は、有形文化財に登録されるような歴史的な発電所であるが、現在でも現役の発電所である。多くの産業では明治時代の生産設備が現役で稼働することはないが、水力発電所では稼働している現役の発電所が各地に現存している。

 また、先日は軽井沢の別荘地に今でも使用されているプレハブ住宅が有形文化財に指定されることが決定して話題になっていた。この建物は、1963年に積水ハウス株式会社<1928>が建築したもの。現在の住宅産業をけん引しているプレハブ住宅は1960年頃から本格的に開発、販売が始まっているが、当時は勉強部屋などの付属建築物がほとんどだった。しかし今回、有形文化財に指定された「山崎家及び臼井家別荘(セキスイハウスA型)」は、水周り設備まで備えており「国産工業化住宅」の第一号といえるもの。そして、建築当初の仕様を残して現存する唯一の住宅であることから、現在では広く高性能住宅として認知されるまで独自に進化発展を遂げた工業製品としての住宅産業の勃興期を語る建物として評価された。

 古くからの日本の登録文化の代表である国宝や重要文化財以外にも、現代の日本の文化や産業を形成してきた明治以降の近代日本の有形文化財を一つ一つを見てみると、選ばれた意味や、その背景にある日本の歴史や文化が垣間見られて面白い。(編集担当:藤原伊織)