シンナー不足はなぜ起きたのか 経産省が追った“供給の目詰まり”

2026年06月03日 08:27

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経済産業省は中東情勢を受けた石油化学製品の供給状況を点検。シンナーや塗料を巡る課題は「不足」ではなく「流通の目詰まり」にあるとして、供給ルート強化やトルエン供給拡大などの対策を進めている。

今回のニュースのポイント

中東情勢の緊迫化に伴う供給懸念に対し、経済産業省がまとめた最新の動向資料から、国内の石油化学製品の本質的な課題は「総量不足」ではなく「流通の偏りや目詰まり」であることが示されました。ナフサ由来の主要な原材料は代替調達の加速等により供給体制の回復が進んでおり、年度を越えた安定供給が可能な見通しです。経産省は中小企業庁や地方経済産業局と連携し、取引上の交渉力が強くない地域の小規模事業者へ物資を確実に行き渡らせる「ボトルネック解消」に全力を挙げています。

本文
 中東情勢の緊迫化を背景に、国内ではナフサをはじめとする石油化学製品の供給体制に対する懸念が広がっていました。特に建設・住宅現場などで用いられる塗料やシンナーは一部で品薄感が噂され、産業基盤への影響が不安視されていました。しかし、経済産業省が設置したタスクフォースがまとめた実態調査資料から浮かび上がってきたのは、絶対的な生産量の不足ではなく、必要な現場へ物資が滞りなく届かないという「流通過程の目詰まり」という課題でした。

 石油化学産業において最も重要な出発点となるナフサは、プラスチック、塗料、シンナー、接着剤、断熱材、食品の包装資材にいたるまで、多種多様な基礎化学品・誘導品の製造を支える不可欠な資源です。地政学リスクの高まりを受けて一時は需給逼迫への警戒感が高まりましたが、経済産業省や各業界団体のファクトによると、国内での原油精製活動が継続されていることに加え、中東以外の地域からの代替調達が急速に拡大したことで、供給体制の回復が進んでいます。

 川上にあたる石油化学工業協会のデータでは、国内需要の3ヶ月分以上の在庫水準が維持されています。また、川中・川下にあたる日本塗料工業会、印刷インキ工業会、塩化ビニル管・継手協会、ウレタンフォーム工業会、フェノールフォーム協会、キッチン・バス工業会などの各産業界からも、足元の出荷量や生産量は前年同月並み、あるいは前年実績を上回る規模を達成しているとのデータが発信されました。これらの客観的な需給見通しに基づき、政府は石油化学製品について「年度を越えた安定供給が可能である」との見解を示しています。

 それにもかかわらず、地方の工務店や一人親方などの塗装事業者、あるいは中小の製造現場において一時的に品薄感や調達の遅れが指摘された背景には、多層的な流通構造に起因する物資の偏りがありました。取引先との価格・数量交渉力が相対的に強くない小規模事業者のもとに、製品が均等に行き渡らないボトルネックが発生していたのです。

 経済産業省はこの目詰まりを解消するため、シンナーや塗料の主原料となるトルエン等について、メーカー側の要請に応じて最大で例年の1.8倍となる大幅な供給拡大措置を執行しました。さらに、従来の石油化学メーカーから商社等を経由するルートを補完するため、石油元売が原油を精製する段階で抽出されるトルエンなどを直接シンナーメーカー向けに供給する「直接供給ルート」の強化を敢行し、地方の需要先まで円滑に製品を届ける体制の強化を進めています。

 また、経産省が主導する燃料・物資の安定供給確保策の対象は、建設分野にとどまりません。先端産業の基盤である半導体製造や、自動車等の次世代電池製造、さらには船舶エンジン出荷前の陸上試験に必要となるボイラー用のA重油など、日本の産業全体のコアを担う製造業関係の生産ラインに対しても、個別の供給確保や元売事業者からの直接販売スキームを通じた強力な安定供給に向けた支援策が講じられています。

 今回の需給逼迫局面を通じて浮き彫りとなったのは、国内の供給体制の回復が進む一方で、サプライチェーンの構造や地域差、事業者の規模によって現場が調達難に直面するという現代経済の脆弱性です。経済産業省は中小企業庁や全国の地方経済産業局を通じて、中小・小規模の製造事業者に対するプッシュ型の情報提供や窓口相談を実施し、目詰まり箇所の迅速な特定と解消を継続しています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)