英国でウイスキー専門誌「Whisky Magazine」を発行するパラグラフ・パブリッシング社は、毎年ウイスキーの世界的なコンテストを開催している。コンテストには大きくふたつのカテゴリーがあり、2002年に始まったウイスキーそのものの味わいを評価する「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」と、世界のウイスキー業界に著しい貢献したメーカー、蒸溜所、人物、小売店などを表彰する「アイコンズ・オブ・ウイスキー(IOW)」がある。十数部門ある審査は、業界内より提出された膨大なノミネートから審査員が上位の入賞者を選定し、最終的な投票によって受賞者が決定される。WWAは今年で第14回目の開催だ。
そのウイスキーの国際的コンテスト「アイコンズ・オブ・ウイスキー2016」において、「ワールド・ベスト・ディスティラリー・マネージャー」をニッカウヰスキーの北海道工場余市蒸溜所・西川浩一所長が受賞し、“世界最高”の蒸溜所責任者として認定された。ニッカウヰスキーの蒸溜所所長が、IOWコンテストにおいて世界最高賞を受賞するのは初となる。
なお、ニッカウヰスキーは、第一回開催のWWAで「ニッカウヰスキー余市10年」シングルカスクで「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」を受賞し、世界最高のウイスキーと認定され、当時の小泉純一郎首相が国会で「日本の製造業には世界一となる製品を作り出せる」と産業界を鼓舞した経緯がある。
西川浩一氏は1982年にニッカウヰスキーに入社し、西宮工場、余市蒸溜所、宮城峡蒸溜所、英ベン・ネヴィス蒸溜所などで生産および品質管理に携わってきた。それらの実績に加え、2015年1月より所長を務める余市蒸溜所の運営について高く評価された。
西川氏は、「このたび名誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。“本物のウイスキーをより多くの人に飲んでもらいたい”という創業者・竹鶴政孝の想いを常に持ち、歩み続けてきたことが、多くの皆様にご評価をいただけた結果だと信じます。創業者をはじめとする多くの先人の功績に感謝をしつつ、さらなる精進を重ね、世界中の皆様に喜んでいただけるウイスキーをつくり続けることをお約束いたします」と述べた。
ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所は、昨年NHKの朝ドラでも紹介された “日本のウイスキーの父”と呼ばれるマッサンこと竹鶴政孝氏により、1934年にニッカウヰスキー第一号蒸溜所として建設された。ウイスキーの個性はその土地の自然や風土に大きく影響されることから、冷涼で湿潤な気候、きれいで豊富な水、澄んだ空気といったウイスキーづくりに必要なものがすべて揃っている場所として選んだ。創業から80年以上たった現在も、世界でも稀な古典的な石炭直火焚き蒸溜や、土間敷きの貯蔵庫での長期熟成などの伝統的なウイスキーづくり続け、世界で高い評価を受ける高品質なウイスキーを生産し続けている。
余市蒸溜所ではウイスキー製造工程の見学に加え、ウイスキーやニッカウヰスキーの歴史を知ることができるウイスキー博物館や、登録有形文化財に認定されている歴史的建造物があること、ウイスキー試飲などが人気で、2015年は創業以来過去最高となる90万1千人(前年比193%)の見学者数を記録した。
こうした充実したウイスキー製造施設として余市蒸溜所が評価され、今回の受賞につながったようだ。(編集担当:吉田恒)