認知度低い難病HAE 患者会が理解を呼びかける

2016年05月25日 12:24

 HAEという難病をご存知だろうか。正式には遺伝性血管性浮腫といい、遺伝子の変異が原因で血液中のC1-エラスターゼ・インヒビターの機能が低下する。これを発症すると、体のいたるところが2日から3日ほど持続する腫れやむくみを繰り返すようになる。一見すると蕁麻疹に似ているが強いかゆみを伴わないのが特長だ。胃や腸が腫れると腸閉塞を起こす、嘔吐するなどの症状が現れ、のどが腫れた場合には呼吸困難に陥って命を落とす危険性もある。

 原因を特定するのは難しい。発作の頻度は一定せず、集中的に起こることもあれば数十年起こらないこともある。また、女性患者の場合には月経の時に腫れを繰り返す症例もある。

 HAEの診断には、血液検査を行う。主にC1-エラスターゼ・インヒビターの機能が活性化しているか、補体であるC4の濃度はどうなっているかを見る。むくみを起こす他の病気も診断を進め、必要に応じては遺伝子検査も行うというものだ。

 HAEは病気の認知度は低く、理解を得ることが難しい。欧米では、HAEの患者数は5万人に1人。医師でも診断まで10年以上かかってしまうのが現状だ。そのため、患者会は5月16日をHAE DAYと定めて理解を広める活動に乗り出した。こうした取り組みを行うことで、患者が適切な治療を受けられる環境を整備することが目的だ。さらに、東京や大阪などでは交流会も開かれている。

 患者や家族で作られているHAEジャパンの理事長を務める山本ベバリーアン氏も10代から腹痛などの症状に悩まされていた。HAEの診断を受けたのは52歳で、それまでは子宮内膜症と診断され薬の投与を受けていたという。症状が悪化した経験もある。山本ベバリーアン氏はのどが腫れて緊急入院したことが診断のきっかけだった。知られていないHAEの現状を思い、「遺伝性血管性浮腫(HAE)について知ってほしい」と2014年に患者会を発足した。

 患者会が功を奏したのか、医師によるHAEの研究会も16年3月に発足。HAEの第一人者である大井洋之医師は「腫れやむくみを繰り返す場合は、放置せず皮膚科や内科などを受診してほしい」と語っている。(編集担当:久保田雄城)