富士キメラ総研の調査によると、同社が推計した国民消費支出(租税公課除く)280兆5202億円の17%を占める47兆3870億円となった国内カード関連市場。同調査によると、2016年には22%を超える62兆6992億円にまで市場が拡大すると見られており、益々カード決済が日常に広がりつつある。
こうした傾向を裏づけるように、この一週間だけでもカード関連市場は大きく動いている。例えば、ジャックス<8584>とセブン・カードサービスは、セブン・カードサービスの運営する電子マネー「nanaco(ナナコ)」のサービスに関して業務提携し、ジャックスが発行するクレジットカードの会員向けサービスとして、nanacoへのクレジットチャージサービスおよびポイント移行サービスを開始すると発表。名古屋鉄道<9048>、トヨタファイナンス、およびJCBは、中部国際空港セントレアの商業店舗計91店舗に、電子マネー「manaca」および「QUICPay」を導入するという。また、UCカードは、スポーツクラブNASが運営する「スポーツクラブNAS」および「NASエステ&ネイル」計55店舗を対象にシンクライアント端末を導入し、従来の、クレジットカード、電子マネー「iD」、銀聯カードの3つの決済手段に加え、交通系電子マネー(Kitaca・Suica・TOICA・ICOCA・SUGOCA)及びJ―Debitでの決済サービスを開始する。全国のスポーツクラブにおいて、交通系電子マネーを全国規模で利用できるのは、「スポーツクラブNAS」が最初になるという。
上記の例でも見られる通り、カード関連市場の中でもプリペイド型の電子マネー市場が伸長の中心となりそうである。電子マネーの内、予め現金を入金して利用する前払い型電子マネーであるプリペイド型の電子マネーは、先の富士キメラ総研の調査によると、2011、2012年は「WAON」「nanaco」の流通系や「楽天Edy」が加盟店舗数及び発行枚数を大きく伸ばしており、利用件数、決済金額共に前年比110%以上で推移していくと見込まれている。さらに、「Suica」などの交通系も、一部で震災の影響により発行枚数に影響があったものの、決済金額は増加。「シニアnanacoカード」「G.Gイオンカード」などといったシニア向けサービスも増加しており、2012年で見込み2011年比133.4%の3兆1140億円となった同市場は、2016年には2011年比2.4倍の5兆7000億円と予測されるなど、市場の拡大を牽引していくと見られる。
小切手決済が比較的浸透していなかったドイツなどの欧州諸国や、交通乗車券でICカードを利用する文化が浸透している東・東南アジアにおいては、日本と同様に需要が拡大する可能性があるという。いずれ内需が縮小すると見られている以上、こうした地域を対象に世界戦略を練る必要があるであろう。その為の動きが、今年は活発化するのかもしれない。(編集担当:井畑学)