1月末、東京電力を除く全電力会社の第3四半期決算が発表された。原子力発電所を持たない沖縄電力<9511>は、連結・単体ともに2年連続で増収減益となったが、他の電力会社に関しては、絶望的とも言える状況に入りつつあるようである。
四国電力<9507>は、前年同期を上回る豊水となったことから、水力発電量が前年同期比3.0%増加したものの、原子力発電所の全号機停止により火力発電も11.8%増加。結果、燃料費と購買電力が大幅に増加したため、営業損益が359億円の損失、経常損失も405億円となっている。同時に発表された通期での業績予想も、営業損益が630億円の損失、経常損益も690億円の損失としている。営業損失となるのは連結決算を開始した平成3年度以降、初だという。
九州電力<9508>に関しても、火力燃料費や購入電力が大幅に増加し、経常費用が前年同期比13.4%増の1兆3743億円にまで膨らみ、結果、経常損益は2331億円の損失となっている。こちらも同時に通期での業績予想を発表したが、営業利益が3350億円、経常利益が3700億円のそれぞれマイナスとしている。関西電力<9503>は第3四半期連結業績で、営業利益が1975億8900万円のマイナス、経常利益も2214億7200万円のマイナスとなっている。通期での業績予想に変更はなく、営業利益で3500億円の損失、経常利益も3900億円の損失としている。
北陸電力<9505>に関しては、第3四半期においては経常収益が前年同期比101.0%の3673億円、経常利益も同139.1%の138億円と一見好調である。しかし、通期での業績予想は経常利益が50億円の損失、営業利益に関しても前年比57.1%減の50億円としており、厳しい状況に変わりはない。その他、北海道電力<9509>や東北電力<9506>、中部電力<9502>も損益を計上しており、健全な状況と言えるのは沖縄電力のみである。通期での連結業績予想を合計するとその赤字額は1兆円を超える数字となっており、原子力発電所の停止が、社会インフラの根幹とも言える電力の安定供給を揺るがす状況にまで来ていると言えるのではないだろうか。
全国でメガソーラー発電所の建設が進んでいるとはいえ、原子力発電所の停止分を補うには不十分である。また再生可能エネルギー固定買取制度の影響により、メガソーラー発電所による発電が増えるにつれ一般家庭の電気料金は上昇を余儀なくされる。政府は、総額約3100億円を投じて送電網を整備し、今後10年程度で国内の風力発電の設備を現在の3倍程度にまで増やす計画であると報じられはしたものの、太陽光発電同様、天候に左右されやすい発電方法であり、安定供給を望めるものではない。蓄電池の普及が、こうした不安定な発電方法でも安定的に電力を利用するための必須条件となろうが、依然として価格は高く、一般家庭への普及はまだまだ望めそうもない。円安が進めば、さらに火力発電の燃料費は上昇し、電力会社を圧迫、電気料金への影響も不可避であろう。再生可能エネルギーによる発電で十分な量を安定的に供給できるまで、原発の稼働は必要なのではないだろうか。原発再稼働に頑なに反対する人々は、電力会社の状況をどう捉えており、どう解決するのであろうか。(編集担当:井畑学)