2013年は、音楽業界にとって大きな変革の年になるかもしれない。なぜなら、日本でもいよいよ、本格的に音楽の定額制聴き放題ストリーミングサービスが始まるからだ。
定額ストリーミングサービスとは、課金制で楽曲をストリーム方式で配信し、スマホなどで音楽の視聴がし放題になるサービスのこと。聴いた曲はキャッシュに保存しておけば、通信圏外でも楽しめるというものだ。
2008年にスウェーデンで始まり、今欧米で急速に人気が広がっている「Spotify」という、楽曲が無料で聴き放題のクラウド型音楽ストリーミングサービスがある。かねてより、この「Spotify」が日本に上陸するのを待ち望む声が多かったが、著作権法上の理由により国内での利用はできなかった。それがいよいよ、日本での正式サービスを開始する動きをみせている。
そして、それに対抗するかのように「レコチョク」「光テレビミュージック」「Music Unlimited」「Groovy」「Lismo Unlimited」などが、今春から続々と定額ストリーミングサービスの提供を開始するのだ。
その中でも、最も注目されているのがレコチョクの「レコチョクBest」。日本のほとんどのメジャーレーベルが名を連ね、邦楽の圧倒的なコンテンツ数を誇る。おそらく、現状の邦楽定額ストリーミングサービスにおいては、一歩も二歩も抜けた存在だろう。レコチョクは3月上旬のサービス開始を目指しており、利用料は月額980円になる見通しだ。
また、ソニー<6758>が運営する「Music Unlimited」の最大の特徴は、1,300万曲にのぼる膨大な楽曲数だ。邦楽よりも洋楽コンテンツを中心に視聴する人にとっては、このサービスが一番だろう。また、音パターンを解析してお勧めの曲を紹介してくれる「SensMe機能」も面白い。すでに稼動しており、現在は1480円で利用できるが、3月1日からは他社に対抗して月額980円となる予定。
そして、DeNA<2432>の「Groovy」は、他社との差別化をはかり、SNSとの連携に力を入れる。また、有名楽曲の品揃えはレコチョクに及ばないものの、クラシック最大手のナクソスや、アニメ系ではランティス・メディアファクトリー、HipHop系などに強く、マニアには喜ばれそうだ。サービスは3月末までに開始される予定で、利用料は未定。
最後に、Auの「Lismo Unlimited」は、AUの携帯アプリとして有名な「Lismo」だが、現状では価格や楽曲数などの面では他社のサービスに見劣りする感は否めない。
いずれにせよ、今年の3月が日本の定額ストリーミングサービス、ひいては日本の音楽配信業界にとっても大きなターニングポイントになることは間違いない。それぞれが特色を上手く出しあって共存していくのか、顧客を食い合って戦国時代に突入するのか、それとも「Spotify」の参入ですべてが革新されてしまうのか、各社の今後の動きに注目したい。(編集担当:藤原伊織)