地域活性化を託された「ゆるキャラ」たちの使命

2012年12月03日 11:00

 先日、「ゆるキャラグランプリ2012」のグランプリが発表され、愛媛県今治市の「バリィさん」がグランプリを獲得し、話題となった。この「バリィさん」、モチーフになっているのは、今治城や今治タオル、来島海峡大橋など今治の街を象徴するものたち。イラストを手がけたのは、第一印刷のデザイン担当社員だという。ほんわかとしたムードに癒されるという声が大きく、今年はついにグランプリを獲得。今や、メディアでも連日取り上げられるほどの人気者となっている。

 そもそも、「ゆるキャラ」という名称は「ゆるいマスコットキャラクター」を略したもので、漫画家でエッセイストであるみうらじゅん氏が考案。主に地域全般の情報PRするマスコットキャラクターなどを指す。「ゆるキャラ」という言葉自体も扶桑社とみうらじゅん氏によって2004年11月26日に商標登録されている。

 2010年より始まった「ゆるキャラグランプリ」は、「ゆるキャラまつりin彦根~キグるミさみっと~」に併せて開催され、携帯電話による投票部門及び会場での記名投票部門の2部門で争われた。その結果、携帯投票では滋賀ふるさと観光大使を務めるミュージシャンの西川貴教氏を模したキャラクターであるタボくん、記名投票では「ひこにゃん」が制したことで、メディアでも「ゆるキャラ」というワードが頻繁に取り上げられるようになった。

 そして2011年になると、主催者が「ゆるキャラさみっと協会」に変更され「ゆるキャラさみっとin羽生」に併せて開催された。投票対象はグランプリにエントリーを行った全ての「ゆるキャラ」で、投票方法はインターネットに1本化。結果、熊本県のPRキャラクターである「くまモン」がグランプリを獲得し、その異質な愛くるしさから人気が爆発した。

 「ゆるキャラ」のデザインは、職員が知恵を絞って作り上げたものもあるが、やはりプロであるクリエイターに依頼してつくったものが多い。初代グランプリである「ひこにゃん」もイラストレーターによりデザインされ、これまでの経済効果が数百億円とも言われている。また、2代目グランプリの「くまモン」は九州新幹線全面開業に向け、『くまもとサプライズ』と称したキャンペーンに開通前年の2010年に誕生したキャラクターで、脚本家の小山薫堂氏、アートディレクターの水野学氏のアイデアにより登場した。以降、「くまモン」は熊本への観光誘致を狙った関西圏での広告展開に貢献。例えば「くまモン」がさまざまな場所に訪問した時の様子を専用のブログや公式ツイッターで紹介したり、ユニークなキャッチフレーズを約50種類程度用意し、大阪を中心に新聞広告や交通広告を展開するなど、さまざまな場面で人々がくまモンを目にする機会を増やしていったという。さらに知事から熊本県の営業部長に抜てきされ、身分は公務員という肩書を持つなど、ユニークな印象を残す「ゆるキャラ」としての存在価値をアピールしていった。これらの活躍から、昨年は「ゆるキャラグランプリ2011」のグランプリに。今年は日本国内の最高ライセンスブランド・キャラクターを決定する「ライセンシング・オブ・ザ・イヤー2012」では熊本県のみに留まらず全国規模の展開へ成長したことを評価され、ニューフェイス賞を受賞している。さらに11月27日には熊本産デコポンを使った食品メーカー「カゴメ」の季節限定販売の野菜ジュースをPRするテレビCMで全国デビュー。「ゆるキャラ」の枠を超え、全国レベルでの認知度を高め年間の経済効果は25億円を超えていると言われている。

 「ゆるキャラ」を使ったイベントは全国各地で数多く開催され、今年も次々に新キャラクターが誕生した。しかし、ただインパクトがあるデザインのキャラクターを登場させても、どのように地域活性化につなげていくか、その戦略の芯の部分がぶれていては、何の効果も期待できないだろう。また、たとえ一時的に話題になったとしても、長続きせずに消えてしまう可能性も高い。キャラクターをデザインするクリエイターと、地域のことを良く知る地元の自治体職員がしっかりと意見をぶつけあい、そのキャラクターの背景、その後の活動内容まで確立していくことが、「ゆるキャラ」を一過性のブームで終わらせない要因だと考えられる。