しばらく鳴りをひそめていた世界経済の地雷原「ヨーロッパ」が牙をむいた。スペインのラホイ首相周辺に不正資金疑惑が浮上し、イタリアでは総選挙を前にベルルスコーニ前首相の勢力の支持率が急上昇。「ムッソリーニは良いこともした」と口にするこの政治家が政権に復帰すると財政再建策を逆さ吊りにしかねない。両国の国債利回りは上昇してユーロは急落し5日朝方のユーロ円は124円台半ばに。前日93円台にタッチしたドル円は92円台前半に踏みとどまったが、NYダウは129ドル安と大きく下落した。
過熱感があっても為替に支えられていた日経平均の大幅下落が心配されたが、155.11円安の11105.24円で始まり、前場はおおむね11100円台前半、後場は11000円を割り込む水準で一進一退で推移した。VIX指数(恐怖指数)の上昇は2ポイント程度にとどまり「リスクオフ」とまでは言えず、ヨーロッパ限定でドルの急落がなければ日本株は底堅く、市場では「ちょうどいい押し目」という声も聞かれた。終値は213.43円安の11046.92円で、安値引けで6日ぶりの反落。しかし商いは盛り上がり、売買高48億株、売買代金2兆5468億円で前日の記録を更新した。
業種別の値上がりセクターは空運、ガラス・土石、水産、食品、化学、小売など内需系が多く、値下がりセクターは不動産、保険、倉庫、金属製品、非鉄、鉄鋼などだった。
業種別騰落率2位のガラス・土石は前日に大きく下げた日本板硝子<5202>が投資判断引き上げにより一転、買いを集めて売買高4位になり、18円高で値上がり率2位に入った。同業の旭硝子<5201>も24円高で続伸した。
パナソニック<6752>は、安く始まったところに押し目買いがなだれ込み前日に引き続き朝から大商い。その後はマイナスまで沈む荒い値動きだったが、終値は27円高の719円で、一時は775円まで上昇し昨年来高値の783円に迫った。売買高は3億株を超えてみずほ<8411>に次ぐ2位で、売買代金は1位。ソニー<6758>は10円安、シャープ<6753>は12円安。日経新聞が今期最終赤字1000億円規模と報じた富士通<6702>は15円安、業績見通しを下方修正した日立<6501>は36円安と売られた。エーザイ<4523>、アルプス電気<6770>は買い戻され、後場に自社株買いを発表したニチレイ<2871>は直後に急騰した。
1月の既存店売上が不振だったファーストリテイリング<9983>は790円安と売られ、75円安のソフトバンク<9984>とともに日経平均を40円引き下げた。トヨタ<7203>はこの日が決算発表でNHKが「単体業績見通しを200億円の営業赤字から数百億円の黒字に上方修正」と報じたが55円安。大引け後に発表された決算は通期の売上高を5000億円、営業利益を1000億円、純利益を800億円それぞれ上方修正するという良い内容で、6日は反発しそうだ。
「安倍相場」で大きく上昇した不動産株に利益確定売りが活発に入り、業種別騰落率でワーストになった。大手の三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>は揃って3ケタ安。三大メガバンクも野村HD<8604>も揃って下落した。
前日に上がった防衛関連株はあっさり売られ、豊和工業<6203>は値下がり率8位、石川製作所<6208>は同9位。中国船がチョッカイを出してきたら、また買われるか。新興市場のバイオ関連株が買いを集め、東証1部主力銘柄とのシーソー型循環物色になっている。
今日の主役は業種別騰落率トップの空運株のJAL<9201>。前日、通期の営業利益を上方修正する決算と、年間180円の復配を発表した。「公的資金投入や法人税の免税であんなに国からサービスされたら当然」などとまた批判されそうだが、市場は素直に好感して195円高。再上場来高値を更新して株価を4000円台に乗せた。7機保有するボーイング787の事故による欠航の影響は17機の全日空<9202>よりも小さく、影響は限定的とみられている。その全日空は1円高だった。(編集担当:寺尾淳)