富士通が、スーパーコンピュータ「京」や各種サーバ、パソコン、スマートフォンなどの製造で培った富士通グループにおける長年のノウハウ、ツール、人材を結集し、製造業に向けて外販することで新たな価値を提供する「ものづくり革新隊」を確立し、これにもとづくサービスを順次提供すると発表。関連ビジネスを含め、3年間で売上1000億円を目指す。
現場を熟知したベテラン人材による「ものづくりエキスパートサービス」、現場で使い込んだICTソリューションや生産設備などの「ものづくりツール」、高度な専門業務の受託や工場共通運用業務のBPOなどの「ものづくり受託サービス」を、2012年10月から順次開始。高性能なエンタープライズ製品からコンシューマ製品まで幅広く、ものづくりの全領域をICTでつなぐとともに「ものを作らないものづくり(デジタルモックアップ)」「フレキシブル生産(標準化・自動化)」「ものづくりモニタリング」などの先端ICT技術を駆使することで、開発期間の短縮や生産性の追求、グローバルな開発・生産拠点を活用した柔軟性の高い開発生産プロセスを確立し、ものづくり革新を支援するという。
なお、モデル工場として、スーパーコンピュータや各種サーバを製造する富士通ITプロダクツ、携帯電話の開発・製造を行う富士通周辺機、ノートパソコンの生産拠点である島根富士通を公開し、ものづくり現場の視察機会、ものづくり革新推進部門や現場の推進者の実践的なノウハウを提供する。
今回提供を開始するサービスは、富士通ならではの強みを商品化したものといえる。しかし、長年培ってきたノウハウやツールなどを公開するものとなるだけに、富士通自体の競争力を低下させるものになるのではないか、との懸念もぬぐえない。世界経済の低迷に加え、円高、環境対策、震災とそれに伴う電力不足など、日本の製造業が厳しい環境下にある中、日本全体の底力向上となるのか。それとも、技術の流出・均一化となり、さらに差別化の難しい状況となるのか。紙一重のサービスと言えるのではないだろうか。