各国が地上デジタル放送で激しいシェア争い

2012年05月01日 11:00

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中国地上デジタル放送国家標準GB20600-2006(DTMB)に準拠したロームグループ ラピスセミコンダクタの復調LSI。

 世界各国で導入の広がる地上デジタル放送。日本でも昨年7月にテレビのアナログ放送が終了し、地上デジタル放送へと完全に移行した。移行の際に盛んに啓蒙活動が行われたこともあり、地上デジタル放送という言葉を知る人は多いがその方法、つまり方式・規格について、知識のある人はどの程度存在するであろうか。

 地上デジタル放送では、デジタル方式で変調された電波信号をチューナーで受信し、復調器でデジタル信号を取り出すことで、画像や音声などとして認識できる仕組みとなっている。この方式には、国際電気通信連合から国際的な地上デジタル放送規格として認められたISDB-T方式、DVB-T方式、ATSC方式、DTMB方式の4つが存在し、世界各国がいずれの方式・規格を採用するのかについて、現在、激しい争いが繰り広げられている。

 中でも今一番勢いのある方式がDTMB方式である。昨年末に国際規格として認められたDTMB方式は、東南アジアや南米・アフリカなどに積極的な売り込みを展開しており、すでに香港・マカオ・ラオス・カンボジア・ミャンマーなどが採用を決めたという。

 このDTMB方式の確立には、日本の半導体メーカーであるロームが関わっている。DTMB方式の確立に大きく寄与した中国の清華大学は、研究成果・人材教育の両面において中国国内でトップレベルにあり、特に電気・電子工学といった理工系分野においては他大学の追随を許さない実績を誇っているというのだ。清華大学とロームとは2006年に包括的産学連携契約を結び、通信技術やLSI回路設計、バイオ、センシングなど多岐にわたる共同研究を実施。2011年には最先端研究施設である清華ローム電子工程館を建設し、さらに今年も4月28日に行われる研究成果を発信するフォーラムは3年目を迎えるなど、深い連携関係にある。そして、共同開発の第一弾として昨年末に発表されたのが、高安定受診性能を業界高水準の低消費電力で実現する、DTMB方式による放送を受信する復調・誤り訂正LSIなのである。

 現在DTMB方式の中心を担う中国では、広大な国土の都市部周辺部だけでなく農村部にまで、地上デジタル放送若しくは衛星放送を用いてカバーする計画でアナログ放送からの転換が進められており、今後地上デジタル放送の急拡大が見込まれている。また、前述のような積極的な売り込みや、価格の安さなどからDTMB方式を採用する国が増加しており、その勢いはしばらく止まらないであろう。DTMB方式が広まれば、必然的に受信機器もそれに対応したものが広まる。この受信機器に搭載されるのが、清華大学とロームとが共同開発したような復調・誤り訂正LSIである。激しい競争の中でDTMB方式がどれだけの国に採用されるのか。そこに日本企業が関わっていると知るだけで、自然と興味が湧いてくるのではないだろうか。