ロシアで始まる自販機普及、日本企業の動向は

2012年05月01日 11:00

 BRICsの一角として経済発展国と位置付けられており、1999年からリーマンショックの影響を受けた2009年まで、毎年4.7%~10%もの経済成長を続けていたロシア。さらに2010年は前年のマイナスを引きずらずに4.0%の成長を遂げ、昨年にはWTOへの加盟承認が済み、現在は国内批准手続きを進めている段階である等、最も注目を集めている国の一つとなっている。そんなロシアで、自動販売機設置台数の増加が図られているという。

 ロシアにおける携帯電話やインターネットの普及率は、先進国に比べて遅れているわけではないものの、自動販売機に関しては大きく遅れている。日本自動販売機工業会のデータによると、日本における2011年末時点での自動販売機・自動サービス機の普及台数は前年比2.4%減の508万4340台であるのに対し、ボストーク通信によると、2011年末時点でのロシアの自動販売機台数は7万5000台。人口が1億4000万人を超える国としては非常に少ないと言えるであろう。また、ボイス・オブ・ロシアによると15000台はモスクワに集中しているものの、人口1300万人の東京には50万台以上、800万人のニューヨークでも20万台以上となっており、1150万人を抱えるモスクワは、大都市としては極端に少ない数字となっている。

 ロシアで自動販売機の普及が進まない理由として、治安の問題や、人件費と設置・メンテナンスコストとの兼ね合い、機械への信頼の無さ、定価販売の習慣がない、などが挙げられるという。殊、ロシアにおける犯罪認知件数は、2010年で約250万件。同年の日本の犯罪認知件数約158万件と比較すると、犯罪発生件数は高い水準にあり、安全性の問題がネックとなり、主に仮設式売店が自動販売機の役割を担っている。

 しかし、モスクワでは2010年秋の市長交代を機に、仮設式売店の取り締まりを実施。ロシアにおける自動販売機の普及の中心を担うこととなり、今年三月にも商業サービス局次長が、自動販売機の普及のための刺激策を講じる意向を発表し、市長もこれに同意。潜在的には20万台まで拡大すること可能として今年下半期には事業コンセプトの実現が開始される予定であるという。

 こうした状況下、世界一の自動販売機普及率を誇る日本の飲料メーカーのロシアにおける動向はどうであろうか。自動販売機の海外設置台数は公式な統計はないようであるが、2005年にはロシア全土で2万台程度であった設置台数が7年で約3倍以上の普及となったことと呼応して、少しずつ設置台数が増加しているようである。殊、日本国内での売上高の約9割が自動販売機による販売で占めるというダイドードリンコの自動販売機は、ロシアに設置された日本の自動販売機の画像として、新聞や雑誌・個人ブログなどに多く見かけられる。同社はBRICsの一角、中国においても、自販機飲料市場の拡大を見込み、今週24日に上海米源グループとの資本提携を発表。海外展開のテコ入れを図っているようだ。

 治安の問題もさることながら、厳しい自然環境のロシアにおいて自動販売機を屋外に設置するためには、耐久性やメンテナンスの負担軽減策が求められる。また、現地に設置された日本の飲料メーカーの自動販売機は、日本円の硬貨投入口が残っており、飲料ラベルなども日本語のままだという。巨大かつ有望な未開拓市場でイニシアティブを取るためには、現地化した自動販売機の開発・設置が必須であろう。その試みが成功すれば、世界中で日本の自動販売機を目にすることも出来るようになるのではないだろうか。