本格化するオープン・イノベーション。動き出す、日本企業

2016年08月27日 20:57

画・都市の「総合力」はそんなに重要なことか 東京は世界第4位

IoTやインダストリー4.0がもたらす経済効果は、2020年には世界で250兆円以上、国内でも20兆円以上に達すると予測されているが、この大きなチャンスに乗り遅れないようにしたいものだ

 ドイツのフランクフルト国際空港に到着から、ドイツ国内線で1時間ほど移動すると、ドイツ主要都市の一つ、ハノーバーがある。ルネッサンス様式の壮麗な市庁舎や、美しいヘレンハウゼン王宮庭園の幾何学的な庭園で知られるこの街のもう一つの顔は、世界最大級の産業機械の見本市「ハノーバー・メッセ」の開催都市であるということだ。

 昨年の出展者数は約6000社を超え、訪問者数は約200000人という驚異的な規模の見本市ハノーバー・メッセには世界中の最先端技術が集まり、全ての産業技術分野を網羅すると言われている。とくに今年4月末に催されたハノーバー・メッセ2016では、ドイツと米国がIoT/インダストリー4.0での積極的連携に合意し、オバマ大統領が視察に訪れたことが大きな話題となったが、いよいよオープン・イノベーションが本格的に動き始め、日本のものづくり産業へも大きな影響を及ぼしそうだ。

 第4次産業革命と訳されるインダストリー4.0の根幹には、スマート工場「考える工場」がある。これは、現行の生産工程に組み込まれているデジタル技術・自動化技術・バーチャル化のレベルを大幅に向上するとともに、コストの極小化を目指すもので、単に工場のロボット化や自動化に留まるものではない。また一企業や一国で収まるのではなく、生産施設をネットで結んだ世界規模の生産システムの構築を目指すことで、物理的な距離や時間の壁を取り払い、より強固で合理的なバーチャル・クラスター(仮想・クラスター)を形成することに真骨頂がある。

 この動きは、ハノーバー・メッセ2016以降、世界の生産現場で活発化しているが、残念ながら、日本企業はそれに対応できる高度な技術を持ちながら、インダストリー4.0の認知度が低く、世界的にみれば立ち遅れていると指摘されている。もしもこの波に乗り遅れてしまえば、世界経済から大きく水を開けられてしまうことになるだろう。

 そんな中、ロームグループのラピスセミコンダクタが、全自動IoTプラットフォームなどA&A Serviceを提供するJIG-SAWグループと技術提携及び共同開発を行った。JIG-SAWの有する IoT データコントロールサービスと、ラピスの超低消費電力が特長の無線通信 LSI 技術及び無線通信モジ ュール技術とを連動させることにより、産業機器の稼働状況の自動モニタリング、データ収集・解析やデータソフトウエアの自動アップデートを可能とするIoTデータコントロールサービスを確立するという。これによりICS(Industrial Control Systems) 分野に進出していくことが狙いのようだ。

 本格化するオープン・イノベーションに向けて、製造業のみならず、あらゆる分野において、ラピスセミコンダクタとJIG-SAWのような企業が日本でも増えてくるだろう。

 IoTやインダストリー4.0がもたらす経済効果は、2020年には世界で250兆円以上、国内でも20兆円以上に達すると予測されているが、この大きなチャンスに乗り遅れないようにしたいものだ。(編集担当:藤原伊織)