遠隔操作の手術ロボットによる目の内部の手術が英国で成功し、70歳の患者が視力を取り戻した。患者は網膜疾患で右目中央の視野が欠けていたという。オックスフォード大学のロバート・マクラーレン教授らが実施した。
手術の内容は、まず直径1ミリメートル未満の穴を眼球に開け、その穴を通して真裏にある網膜を切る。そして網膜を引っ張って歪ませていた膜を除去することで、周囲に損傷を加えずに視力を回復させたという。除去した膜の厚さはわずか10マイクロメートル。
網膜疾患は先進国においても失明の要因となっており、顕微鏡やレーザースキャナーを用いて疾患の部位を細かく観察することは可能だが、扱う対象があまりにも小さいため、外科医による手術が困難である。
そういった現状を踏まえて、今回使われた手術ロボットはマイクロメートル単位で安全に手術が行えるようにしたという。手術用顕微鏡で状況を確認しながらジョイスティックで操作でき、手の震えを取り除きながら指示した動きをロボットの小さな動きに変換することで、眼球内部で細やかな手術が可能になった。
オックスフォード大学は12人の患者に臨床試験を計画している。今回と同様の手術を実施して成功すれば、高齢者の加齢黄斑変性に対する遺伝子治療や、若者の失明の原因となっている網膜色素変形などを想定して、ロボットが網膜の下に細かい針を入れて液体を注入するという作業を評価する。
日本においても手術支援ロボットの普及が広がっており、12年には米国発の「ダヴィンチ」が保険適用になった。ダヴィンチは1~2センチメートルの小さなキズから内視鏡カメラとロボットアームを入れて、高度な内視鏡手術が可能だ。
手術支援ロボットの開発も活発化し、金子製作所は1人で腹腔鏡手術を可能にするロボットの開発を始めた。ダヴィンチの簡易版として売り込むという。また、医療機器開発・販売を行うベンチャー企業であるリバーフィールドは内視鏡操作ロボット「EMARO」の次世代機を18年度に発売する予定。日本製品の活躍にも期待したい。(編集担当:久保田雄城)