安倍首相の「新三本の矢」にある「介護離職ゼロ」に向けて、心強い調査結果が民間から発表された。市場調査会社の富士経済が公表した「“Welfare”関連市場の現状と将来展望 2016」によると、2021年の介護福祉ロボット(歩行・移乗)の市場は、14年と比べて19.4倍の155億円規模に達する見込みだという。
富士経済によると、要介護認定者は15年に600万人を超えるという。介護福祉ロボット(歩行・移乗)市場については、15年見込みが16億円なのに対し、21年には155億円と予測されている。その成長率は14年比で19.4倍だ。介護ロボットといってもロボットが要介護者の世話をしてくれるのではなく、足腰の弱い高齢者や自力での歩行が難しい患者、要介護者の移動、リハビリ訓練などをサポートするロボットを指す。富士経済によると、経済産業省がロボット革命イニシアティブ協議会による「ロボット新戦略」で20年までに介護分野で500億円の事業規模を創造することを揚げて助成金や優遇政策で後押していたり、厚生労働省が15年から「地域医療介護総合確保基金」で介護施設への介護ロボット導入助成を実施したりしていることなど、行政からの支援が追い風になっているとしている。
また、高齢者向けのコミュニケーションロボットのニーズも右肩上がりとなり、21年の市場規模は14年比3.4倍の17億円に達するとみている。市場は04年あたりが草創期だったが、その癒し効果などが注目されるものの導入コストが高いことから、市場は緩やかな成長にとどまっていたという。富士経済では「今後、厚労省により福祉用具貸与品目として採択されれば、市場は大幅に拡大すると期待される」とみている。
厚労省は20年代初頭の介護職員の不足数について、これまでより約5万人多い約25万人とする新たな推計を公表した。「介護離職ゼロ」を実現するには、介護分野で働く人材を増やさなければならないが、介護現場の労働は想像以上に厳しい。介護ロボットの活用を含め、事務負担の軽減など様々な施策が求められている。(編集担当:城西泰)