アクティブラーニングはなぜ後退したのか 次期指導要領「審議まとめ」より

2016年10月05日 07:55

 2020年度完全実施を目指す次期学習指導要領改訂に向けた、中央教育審議会答申の素案「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」が教育課程部会で了承され、現在、意見公募手続と教育関係団体のヒアリングが行われている。内容を見ると、目玉かと思われたアクティブラーニング(AL)については意外なほどあっさりとしか触れられておらず、替わりに太字で強調されている部分は「社会に開かれた教育課程」「学びの地図」「カリキュラム・マネジメント」といったもの。ALの項目では「主体的・対話的で深い学び」が強調されている。

 AL導入に関しては、特に小学校・中学校の教師を中心に関心が高まり、「AL祭り」と揶揄されるほどの現象となっているが、実は諮問文に入った「アクティブラーニング」は欧米に比べて一斉授業が多い高校を主な対象としたものだったとのこと。「アクティブラーニング」という用語が独り歩きし、「子どもたち自身に調査や討論、発表をさせる」という限定的解釈が広がっている状況を憂慮し、丁寧な説明をすべきだとの意見が強まってきていた。その結果、「アクティブラーニング」が素案の強調表示から後退し、替わりに「主体的・対話的で深い学び」との表現が強調されたようだ。審議まとめでは「形式的に対話型を取り入れた授業や特定の型を目指した技術の改善にとどまるもの」ではないとの補足説明をしている。

 グローバル化の進展と人工知能の進化により、特に現在の小学校・中学校の子どもたちが社会に出たときには、環境が現在とは一変したものになっているだろう。仕事や社会生活において求められるスキルも大きく変わってくるのは確かだが、その変化が予測できないゆえ、固定された知識を詰め込むことは無意味だ。このため次期学習指導要領でのAL導入の目標は、対話型・討論型の学習形式に限定されるものではなく、社会に出たときに活かせる、主体的に学ぶ姿勢や対話を通して考え、決まった答えや形式のないところから知恵を汲み取る力となる。具体的な教育手法としての討論や発表も重要となってはくるが、急激な変化は教育手法においても例外ではなく、ALを実施するにあたっての最適な手法・カリキュラムを柔軟に取り入れていくことが期待される。(編集担当:久保田雄城)