国内企業の約3分の2が担保差し入れによる資金調達

2016年11月13日 12:14

画・「完全民営化が先」 ゆうちょ銀行の限度額引き上げで反発相次ぐ

金融機関による企業への融資姿勢について、担保余力を有する顧客への取り組みが優先されてきたなかで、そうした余力が少ないながらも事業性や将来性を評価され資金を注入すべき先に対してのフォローができていないという、「日本型金融排除」の問題が取り上げられている

 10月21日、金融庁は「平成28事務年度 金融行政方針」を発表した。この中で、金融機関による企業への融資姿勢について、担保余力を有する顧客への取り組みが優先されてきたなかで、そうした余力が少ないながらも事業性や将来性を評価され資金を注入すべき先に対してのフォローができていないという、「日本型金融排除」の問題が取り上げられている。

 9月に発表された「金融仲介機能のベンチマーク」にも、担保・保証依存の融資姿勢からの転換として、事業性評価に基づく融資金利や無担保与信先数・融資額の割合などが選択ベンチマークに設定されているなど、担保余力を有し“いくらでも借りられる先”と、日本型金融排除により“借りられなかった先”との二極化の解消が、これまで以上に金融機関に求められている。

 帝国データバンクは、信用調査報告書ファイル(170万社収録)から、現状の金融借入における担保設定状況について分析可能な22万2977社(全国・全業種)を対象に、その実態や調達余力、資金需要について調査した。

 調査対象企業22万2977社の担保設定状況について分析すると、借入に不動産・預金・有価証券などの担保提供が1つ以上含まれる「有担保」による借入を行っている企業が最も多く、全体の65.3%にあたる14万5499 社となっている。企業の約3分の2が担保差し入れによる資金調達を行っていることが分かる。また、全借入が担保提供・保証なしの「信用」が2万1845社(構成比 9.8%)で全体の約1割。有担保での借入は無く、保証協会の保証の付いた借入をしている「保証協会」が5万5633 社(同25.0%)となっている。

 業種別の担保設定状況を見ると、設備や不動産を多く有する「製造業」(有担保構成比:79.2%)と「不動産業」(同83.3%)では、企業の約8割が有担保借入を行っており、全業種平均65.3%を大きく上回っている。一方で、担保物件を持ちづらい「サービス業」(同53.9%)やつなぎ融資での保証協会利用が多い「建設業」(同61.3%)では、有担保借入が少ないことが分かるとしている。

 年商規模別の担保設定状況を見ると、年商規模が50億円以上の企業では「信用」の比率が高まる一方で、「保証協会」の利用は大きく減っている。また、有担保借入を最も利用しているのは年商10億円から500億円未満の中堅企業であり、「10億円~50億円未満」(「有担保」構成比77.9%)と「50億円~100億円未満」(同78.8%)では企業の約8割、「100億円~500億円未満」(同75.1%)では4社中3社が「有担保」となっている。500 億円を超える大企業になると、「有担保」が減少し「信用」が大きく増加する傾向にあるという。

 業歴別の担保設定状況を見ると、業歴が長ければ長いほど有担保での借入を行う先が多く、「100年以上」では約9割(86.5%)の企業が「有担保」となっている。一方で、業歴が浅く担保物件の少ない企業では、「保証協会」や「信用」の比率が高く、「10年未満」では 7 割超(信用:18.7%、保証協会:53.9%)の企業が、無担保での借入となっていることが分かるとしている。(編集担当:慶尾六郎)