15年度の国内のクラウドファンディング市場規模は新規プロジェクト支援額ベースで前年度比68.1%増の363億3,400万円

2016年08月20日 18:17

 矢野経済研究所では、国内におけるクラウドファンディング市場の調査を実施した。調査期間は2016年5月~6月、調査対象はクラウドファンディング運営企業、利用企業など。調査方法は同社専門研究員による直接面談、ならびに電話・e-mail 等によるヒアリングを併用した。

 クラウドファンディングは、米国発祥のサービスと言われ、「Crowd」(=群衆)と「Funding」(=資金調達)を掛け合わせた造語で、資金を必要とするプロジェクト等がインターネットを介して不特定多数の人々から比較的少額な資金を幅広く調達する手段を意味する。

 調査結果によると、2015年7月末時点におけるクラウドファンディングを扱う企業数は100社程度であったが、2016年6月末時点では140社程度に増加した。主に独自にウェブサイトを開設している専業事業者のASP利用やクラウドファンディングの手法を用いた小口投資として地方創生に貢献できる仕組みを取込み、活性化を図ろうと地方自治体の他、行政や一般事業会社もウェブサイトを立ち上げ、地方での利用拡大を進めている。

 そんな中、クラウドファンディングは単なる資金調達の場から、テストマーケティング、販促活動としての活用効果に加え、その後の事業拡大のための継続利用も顕在化しつつある。こうした動きに合わせ、サイト運営事業者側でも、プロジェクトの達成を支援する動きとして、当該プロジェクトの注目を集めやすいように、ウェブサイト内の構成や見せ方を工夫し、グループ会社や他社との提携によって積極的にメディアを利用した情報発信を始めた。また、超低金利時代からマイナス金利の時代に突入し、貸付型でも好利回りを求めて支援者(投資者)が増加しているという。

 2015年度の国内のクラウドファンディング市場規模は、新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比68.1%増の363億3,400万円であった。類型別では、購入型が約32億円、寄付型が約1億円、投資型(ファンド型)が約6億円、貸付型が約322億円と推計した。最も規模が大きい類型は貸付型で、全体の88.7%を占め、市場拡大に大きく貢献している。次いで、購入型は参入企業数が最も多いが支援額ベースでは9.0%である。寄付型は年度によって増減があるが数億円規模で推移しており、年を追うごとに規模が増加傾向にある。投資型(ファンド型)では、大型案件が達成されると大幅に増加し年間の増減が著しいものの平均的に6億円規模で安定的に推移している。

 2016年度の国内のクラウドファンディング市場規模は前年度比で 31.5%増の477億8,700万円を見込む。購入型は約58億円(同81.3%増)、寄付型は約 4億円(同300.0%増)、ファンド型は新たな組成を見込み約10億円(同66.7%増)、貸付型は約404億円(同25.5%増)の見込みである。

 購入型においては、手数料の引き下げ効果、認知度の高まり、共感性の高いプロジェクト起案の増加等から、成立件数も増加している。加えて、数千万円台~1億円規模の大型プロジェクトも成立する事例が増え始めている。また、貸付型においても、マイナンバー届出が必須となった影響により、開設口座数が鈍化しているといわれるが、依然として拡大基調にあるとしている。(編集担当:慶尾六郎)