企業の業績悪化でバレーボール界は風前の灯か

2013年02月11日 20:47

 昨年のロンドンオリンピックでは銅メダルの獲得に沸き、高額な放映権料を目当てに毎年のように国際大会が日本で開催されるバレーボール。2011年のワールドカップでは、テレビ放送された全日本の試合のほとんどが視聴率10%を超え、女子大会の対アメリカ戦では24.1%を記録するなど、数字だけを見れば非常に人気の高いスポーツである。しかしその人気の裏で、全日本に選出されている選手たちのほとんどがプロ選手ではないことを知っている日本人はどのくらいいるのであろうか。

 サッカーで言えばJリーグ、野球でいえばセパ両リーグのように、バレーボールにもVリーグと呼ばれるリーグ戦が毎年行われていることは比較的認知されているであろう。昨年の全日本女子の試合をテレビ中継で見ていた方であれば、Vリーグの中にもVプレミアリーグとVチャレンジリーグが存在し、サッカーで言うJ1がVプレミアリーグ、J2がVチャレンジリーグにあたるといったことも記憶の片隅に残っているかもしれない。このVリーグがサッカーや野球と決定的に異なるのが、プロリーグではないということである。つまり、そこに参加するチームもプロチームではなく、あくまでも実業団・アマチュアチームであり、ごく一部のプロ契約を結んでいる選手以外は、企業に所属する社員なのである。これは全日本に選出されるような選手も例外ではなく、選手が海外リーグへ挑戦をする際、移籍ではなく出向という形が取られることもある。

 実業団・アマチュアチームであるということは、強豪や名門と呼ばれるチームであっても、母体となる企業の業績や意向により簡単に休部や廃部へと追い込まれるということである。ユニチカや武富士(イトーヨーカドー)など、バレーボール部を休部・廃部した例は枚挙にいとまがない。現在も、2月10日時点で女子の1位につけているNECの業績は、一時期の業績悪化から回復基調にあるとはいうものの、決して好調といえる状況にはない。さらに、2月3日時点で男子の2位につけているパナソニックに関しては、今年、全日本総合バスケットボール選手権大会で優勝したバスケットボールチームが休部、日本代表5名を抱えるバドミントンチームも活動休止に追い込まれており、多くの全日本選手が所属するバレーボールチームもいつ休部・廃部となってもおかしくない状況である。

 Vリーグは元来、Jリーグの成功を受けてプロ化を目指して発足したものである。しかし、プロ化が実現しないまま次々と名門チームが姿を消しているのが現状である。業界を盛り上げ、底上げするには、旧態依然としたシステム、アイドルのコンサート会場と化す国際舞台など、解決すべき課題が山積している。オリンピックなどの華々しい場面だけを切り取り、足元の課題を無視するマスコミの取り上げ方にも問題があるであろう。日本バレーボール界の未来は決して明るいとは言えない。もしかするとロンドンオリンピックでのメダル獲得は、蝋燭が消える間際に炎を一瞬大きく見せるような、最後の輝きだったのかもしれない。(編集担当:井畑学)