東京オリンピック・パラリンピックで進む、日本の「おもてなし」の真髄とは?

2016年11月19日 09:27

取材 (1)

日本では東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、そんな「おもてなし」を実現するための様々な取り組みが、各地各所で進んでいる

2020年に開催を控えた、東京オリンピック・パラリンピック。招致の際、国際オリンピック委員会総会の壇上に立った滝川クリステル氏が発言して以来、「おもてなし」という言葉が、同大会のキーワード的に使われることが多くなった。

2013年の新語・流行語大賞にも選ばれた「おもてなし」だが、もちろん、新しい造語などではない。おもてなしは、言葉の通り、客を「もてなし」の丁寧語。しかし、ただのサービスとは異なる。「もてなし」の語源は「モノを持って成し遂げる」だが、「おもてなし」は「表裏無し」、つまり表裏がない心で客を歓待するという意味が込められている。この精神こそ、古来より息づく日本人の心、そのものではないだろうか。

 そして今、日本では東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、そんな「おもてなし」を実現するための様々な取り組みが、各地各所で進んでいる。

 例えば、東京都では2016年3月にオリンピック・パラリンピックのボランティアの活動内容、行政や様々な民間団体のボランティアに関する取り組みを広く紹介する、都独自のウェブサイト「東京ボランティアナビ」を開設。知る・参加する・すすめるの3つのカテゴリーでナビゲートし、外国人をおもてなしするための語学ボランティアや観光ボランティアの育成や募集なども行っている。

 また、外国人に限らず、障害を持つ人が快適に過ごせるための取り組みも積極的に行われている。例えば、空港とメーカーが、車いす利用者にも快適な空の旅を提供するために開いている勉強会などもある。通常、鉄道や他の公共交通機関を利用する移動時には、長時間、車いすをどこかに預けるということはあまりない。唯一の例外が、飛行機の利用時だ。飛行機で移動する場合、車いすは機内に持ち込むことができないため、車いすユーザーは、まるで自分の身体機能の一部がどこかに持っていかれてしまうような、かなりの不安とストレスを抱えることになる。とくに近年は車いす製品の多様化に伴って、間違った扱いによるトラブルが生じたり、空港職員がユーザーからの質問や疑問に答えられないケースが増えているという。

 そこで、こういったユーザーの不安を理解し、和らげるために、中部国際空港を皮切りに、大阪国際空港など、これまで5か所の国内主要空港で空港職員に向けた車いすの取り扱い等に関するセミナーが実施されるようになり、ヤマハ発動機などの電動車いすメーカーも積極的に参加している。

 ヤマハ発動機の担当者は、「地上でサービス業務にあたっている皆さんや客室乗務員の方々に、直接、注意事項などをお伝えすることでトラブルを防ぐこともできますし、私たちも現場で起きているご苦労や不具合を知ることで、製品開発にそれらを反映していきたい」、と語る。また、セミナー主催者も「必要な知識を身につけて、病気や障害のあるお客様に安全で快適な空の旅を楽しんでいただきたい」と語る。こうした心づくしのサポートこそが、日本の「おもてなし」の真髄ではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)