出版不況が続いている。今年は3月に出版取次中堅の太洋社が自己破産したことに始まり、以降は専門誌を扱う中小出版社の倒産が続いた。書店についても 11月25日に「岩波ブックセンター」を経営する信山社が東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。雑誌販売はとくに低迷しており、『Anecan』が11月7日発売をもって休刊となるなど苦境が際立つ。一方で、文芸書でヒット作が続くなか、書籍以外の販売やサービスと組み合わされた複合書店もしばしば見かけるようになっている。
帝国データバンクは、企業概要ファイル「COSMOS2」(約146万社収録)から、2005年度、2013年度、2014年度、2015年度において、年売上高1億円以上の出版関連業者を抽出。売上動向や損益状況について分析した。前回調査は 2015年7月。
2015年度の出版関連業者の総売上高は4兆8867億4400万円となり、2014 年度(5兆672億8700万円)比で1805億4300万円(3.6%)減少した。業態別の内訳は、「出版社」が1兆 8927億6300万円(前年度比5.8%減)、「出版取次」が1兆6354億900万円(同 7.2%減)、「書店経営」が1兆3585億7200 万円(同4.8%増)となり、書店経営業者のみ前年度比増加となった。
また、2015年度を10年前の2005年度と比較すると、総売上高は1兆9007 億3800万円減少(28.0%減)。業態別の内訳は、「出版社」が8961億1100万円減少(32.1%減)、「出版取次」が6763億1600万円減少(29.3%減)、「書店経営」が3283億1100 万円減少(19.5%減)となり、「出版社」と「出版取次」の縮小が顕著となっている。
11月時点で 2014年度と2015年度決算の数値が判明している企業2519社の総売上高を業態に分けて規模別に見ると、売上規模が大きい企業と小さい企業で売上動向に特徴がある。「出版社」と「出版取次」は規模が大きい企業の総売上高が減少した。「出版社」の最大手4社(集英社、講談社、KADOKAWA、小学館)や、「出版取次」の大手2社(日本出版販売、トーハン)の減収となった背景には雑誌や書籍の売上高の落ち込みがある。これに対して、「書店経営」は規模の大きい企業ほど売上高が増加していることが判明。大規模な「書店経営」業者は一定の収益を見込める堅調な本業部門を持つだけでなく、書店へのカフェ併設や電子書籍とリアル書籍の連携、中古本や書籍以外の物品の扱いやポイントカードサービス、インターネットサービスなど、様々な試みが実施されていることが、売上高の全体的な底上げにつながっているものと見られるとしている。
書店経営業者の売上高が伸びた背景には、売上高100億円以上の企業の好調な業績がある。大手書店経営業者は、店頭販売以外に電子書籍市場への参入、インターネットサービス使用やネット通販、複合店舗化による差別化を図っている。
また、2015年3月に発売された『火花』や2016年1月の『天才』など文芸書からヒット作が続いたことも、各社の業績押し上げの要因になったと見られる。依然として出版関連業者の業績は下降傾向にあることは変わらず、厳しい業界環境のなかで減少傾向は続くとみられるが、さまざまな仕掛けによって今後は改善されていくことが期待されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)