16年1-10月に不適切会計を開示した企業は48社 2008年以降では最多ペース

2016年12月08日 08:17

 上場企業で「不適切な会計・経理」を開示する企業が増えている。東京商工リサーチによると、2016年1-10月に不適切会計を開示した企業は48社(49件)で、前年同期の43社(44件)より5社(11.6%)増加した。これは調査を開始した2008年以降では最多ペースで、このままで推移すると年間(1-12月)最多を記録した2015年の52社(53件)を上回る可能性が出てきたとしている。

 この背景には、監査体制の強化だけでなく、目標に向けた従業員への過度なノルマや実現可能性の低い経営計画の策定が不適切会計に走っている側面も否めない。さらに、適正会計に対するコンプライアンス意識の欠如もあり、不適切会計の開示企業は高止まりしている。

 投資家保護などの観点から、金融庁と東京証券取引所は上場企業が守るべき行動規範の策定を進めており、2015年6月に「コーポレートガバナンス・コード」を公表した。2015年5月に東芝の不適切会計が発覚し、企業監査に対する信頼性の確保のためにも企業のガバナンス強化への取り組みを求める声が高まっている。こうした不適切な会計処理を許さない体制づくりの強化には、監査法人の厳格な監査業務も必要だ。

 一方、企業側は期間利益を創出し、業績の維持、拡大が宿命でもある。業績目標の達成に向けて本体企業・連結子会社等ではノルマも強化され、経営計画と現実とのギャップが不適切会計を促す面も否めない。

 不適切会計の動機は、最多は「売上の過大計上」や「費用の繰り延べ」、「不明瞭な外部取引」など、業績や営業ノルマの達成を目的とした『粉飾』が21件(構成比42.8%)だった。次いで、経理や会計処理のミスなどの『誤り』が19件(同38.7%)、会社資金の『着服横領』が9件(同18.3%)と続く。

 子会社・関係会社が当事者のケースでは、「売上の過大計上」、「売上原価の先送り」など親会社に向けた予算達成を偽装した粉飾事例も散見された。また、子会社・関係会社の役員による「会社資金の私的流用」、「架空出張費による着服」、子会社の従業員による「水増し請求による着服横領」など、個人の不祥事による事例もあった。

 発生当事者別では、開示当事者である「会社」が23社(構成比47.9%)、23件(同46.9%)で前年11社(12件)から倍増した。内容をみると、会計処理が細かくチェックされ処理手続きの誤りを指摘されたケースや、引当金処理の誤り、売上高や仕入高の認識の違いから修正するケースがあった。

 「子会社・関係会社」は19社(構成比39.5%)、20件(同40.8%)で、前年の24社から5社減少した。この「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると42社(43件)で、社数では全体の87.5%、件数では87.7%を占めた。

 市場別では2013年までは業歴が短く、財務基盤が比較的弱いマザーズ、ジャスダックなど新興市場が目立っていた。だが、2014年を境に状況は変わり、2015年・2016年は国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部が多くを占め、2016年は23社(構成比47.9%)と約半数を占めた。

 業種別では、製造業が14社(構成比29.1%)、15件(同30.6%)で最も多かった。次いで、運輸・情報通信業の8社(同16.6%)、8件(同16.3%)、卸売業7社(同14.5%)、7件(同14.2%)、小売業の6社(同12.5%)、6件(同12.2%)と続く。(編集担当:慶尾六郎)