「不適切な会計・経理」を開示した企業 累計で43件に

2016年02月15日 07:48

 上場企業で2015年度に「不適切な会計・経理」を開示した企業が、2月9日までに43件に達し、2007年4月以来、年度ベース(4月-3月)での最多記録を更新した。
 
 東京商工リサーチによると、開示企業は新興市場が減少した半面、東証1部、2部上場企業が28件(構成比65.1%)に増えたという。また、「不適切な会計・経理」の内容は「経理処理の間違い」など単純なミス以外に、「着服横領」、「業績や営業ノルマ達成を動機とする架空売上」、「循環取引」など、コンプライアンス意識の欠落や業績低迷を糊塗した要因も多い。産業別では、前年度に続き製造業の増加が顕著で、国外に製造拠点や営業拠点を多く展開するメーカーを中心に不適切会計が多く見られたとしている。

 不適切な会計の内容(動機)は、利益水増しや費用支払いの先送り、代理店への押込み販売や損失隠しなど、業績や営業ノルマ達成のための「粉飾」が18件(構成比41.9%)で最多だった。

 次いで、経理ミスなどの「誤り」が12件(同27.9%)、会社資金の「着服」が10件(同23.3%)と続く。子会社が当事者のケースでは、親会社向けに業績や予算達成を偽装した不適切会計が多く見られた。また、役員らが関与した「役員への不正な利益供与」や、「元従業員による不正行為による会社資金の着服横領」など、コンプライアンス意識の欠落した事例など不適切会計は多様化しているとしている。

 発生当事者別は、「子会社・関係会社」が20件(構成比46.5%)で最多だった。子会社幹部による売上原価過小計上や、在庫操作さらに支払い費用の先送りなど、いわゆる粉飾目的の不正経理のほか、子会社従業員による架空取引を装った着服横領もあった。目が行き届きにくい子会社・関係会社でのコンプライアンスが徹底していないケースが目立つ。

 「会社」は、会計士から経理処理のミスを指摘されたものが大半を占め、また「従業員」では、着服横領のほか、代理店に対する押込み販売など、営業成績のプレッシャーに圧されて架空取引に手を染めるなど、過度の成績至上主義が動機となったケースも多いという。

 金融庁と東京証券取引所は2015年3月5日、上場企業に独立性が高い社外取締役2人以上を選ぶよう促すなど企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を決定した。株主の権利・平等性の確保のほか、適切な情報開示と透明性の確保、内部通報制度の整備など5項目からなり、上場企業が守るべき行動規範を網羅したものだ。

 経済のグローバル化によりマーケットが広がった反面、不祥事は企業存亡の危機に直面することもある。企業が社会の信頼を得るためにも、経営者はコンプライアンスを徹底する高潔な決意が求められるという。また、グループ会社を含めた従業員に対して明確な経営ビジョンを示し、その実現のためにもコンプライアンスを浸透させる重い責任もあるとしている。

 2015年度は投資家への影響度が大きい東証1部、2部上場企業の不適切会計・経理の開示が28社と全体の65.1%を占めている。規模の大小に関係なくコンプライアンスの根幹を見直す時期が来ていると、同社では分析している。(編集担当:慶尾六郎)